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得点王より、代表より、W杯よりも。
大久保「もうタイトルしかないんよ」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/02/17 17:00
ヤンチャな勢いより、30代の経験。大久保はFC東京での初陣となる開幕戦で、その貫録を見せつける心づもりだ。
天皇杯決勝、大久保は人目をはばからず涙した。
しかし、彼にはある“しこり”が残っていた。J1通算最多得点を記録している実力者でも昨年は、高く、越えられない壁にぶつかった。
その相手こそが、鹿島アントラーズ。
昨年11月のJ1チャンピオンシップ・準決勝、そして今年の元日の天皇杯決勝。大久保がプレーしていた川崎は、いずれも鹿島に敗北を喫した。
過去に一度も戴冠したことがないチームにとっては、風間八宏監督(現名古屋グランパス監督)体制の集大成ということもあり、必勝を期して臨んだ。しかし2つの激戦を制したのは、どちらも鹿島。国内随一の強者がタイトル数を19冠に積み上げる結果となった。
敗戦のホイッスルが鳴った直後、大久保は表情を失った。特に自身にとって川崎での最後の試合になった天皇杯決勝では、人目をはばからず涙した。決して、いつもの強気な彼ではなかった。
ブンデスでは長谷部とともに優勝を経験したが……。
大久保は、以前所属したドイツのヴォルフスブルクでは長谷部誠(現フランクフルト)とともにリーグ優勝を経験している。しかし、Jの舞台では一度もタイトルを奪ったことがない。
積年の思いは、川崎だけではなく、大久保個人の感情でもあった。強い気持ちを携えて臨んだ決戦でも越えられなかった、鹿島という壁。メディアの前や公の場で明るく振る舞う姿の背景に、厳然とこの事実が残っている。
鹿島には何が足りていて、自分たちには何が足りないのか。ある時、眉間にしわを寄せながら、真剣な表情で大久保が話した。