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得点王より、代表より、W杯よりも。
大久保「もうタイトルしかないんよ」
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/02/17 17:00
ヤンチャな勢いより、30代の経験。大久保はFC東京での初陣となる開幕戦で、その貫録を見せつける心づもりだ。
「鹿島は冷静な一面も出す。そこが絶妙なんよ」
「フロンターレでは、あれだけ良いサッカーができていた。去年だってGKに(チョン・)ソンリョンやDFにエドゥアルドが入って守備も固くなって、本当に今回こそ優勝できると思っていた。自信もあった。
でも、できなかった。悔しいし、責任も感じた。それと同時に感じたのは、良いサッカーをするだけでは、勝てないんだということ。勝負どころで見せつけられたものがあった。俺たちには鹿島みたいな力強さ、激しさは正直なかった。勝利を手繰り寄せる、ずる賢さもなかった。
日本人って、周りから批判されることをすごく気にするやん。でも、勝負の世界では少々批判されても、勝てばいい。だって批判されるということは、みんなから注目されることでもある。だから俺は、もっともっと相手に噛み付くように仕掛けたいし、チームとしても熱く戦いたい。時には激しすぎることになるかもしれない。でもそこで鹿島は、冷静な一面も出してくる。そこが絶妙なんよ。
仲間の誰かが相手に削られたら、違う選手が抗議する。俺はそういう熱い気持ちが好きだし、俺は迷わず抗議する。仲間にもそうしてほしい。特にこの熱は、鹿島からはあの2試合でひしひしと感じた。相手を倒す熱、仲間を守る熱。それがあれば、絶対にチームは一丸になるから。1つになるきっかけでもあり、エネルギーでもある。フロンターレは、そこが足りなかった」
「俺もこのまま黙ったままではいられないんよ」
昨季の年間勝点は鹿島よりも川崎が上だった。しかし、負けられない一戦にかける熱――。その温度で、鹿島を越えられなかった。大久保が続ける。
「実際にピッチで戦っていて思った。チーム全体で熱を帯びないと、相手に『強えな、こいつら』とは感じさせられない。ただ上手いだけでは、ダメなんだと。俺たちはプレーの精度、サッカーの内容だけでは日本一だっていう自負があった。でも鹿島には、一発にかけるどこにも負けない熱量があった。正直、鹿島のサッカーは決して上手くないよ。でも勝負どころを逃さない。すごいよ。やっていて、『これでも俺たちは乗り越えられないのか』と感じてしまった。
でも、やっぱり俺もこのまま黙ったままではいられないんよ」