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SBの三軍で日本を驚かせる準備中。
茶谷健太と荒金久雄の5カ年計画。 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKyodo News

posted2017/02/17 07:00

SBの三軍で日本を驚かせる準備中。茶谷健太と荒金久雄の5カ年計画。<Number Web> photograph by Kyodo News

ソフトバンクの野手専念組としては、今宮健太が近年の成功例。茶谷健太(後列右から3番目)も後に続けるか。

「5年後、周囲があっと驚く選手になると思う」

「彼の学校って、山梨の小淵沢にあるんですよ」

 甲府から中央本線でさらに松本方面へ小一時間。標高も1000メートルを超える高原の町だ。

「横浜の家から八王子に出て、そこから特急あずさですよ。いったい何度通ったことか。でも見るたびに、僕の想像力の中で茶谷が大きく育っていったんですよ」

 静かに語りながら、静かに笑っている。

 何が悲しくて、海のものとも山のものともわからん田舎の高校生を何度も見に行くのか……。

 かつて、そんな“泣きごと”をさも嬉しそうにこぼしてくれたベテランスカウトは、あとで他球団のスカウトたちが地団駄踏んでくやしがるような無名の逸材を、何人も発掘してみせた。

「あれだけのサイズがあって、足だって50mを6秒切るぐらいのスピード持ってます。高校時代はピッチャーの練習とランニングぐらいしかやってなかった選手なのに、去年1年でサードとしてのフィールディングをびっくりするほど身につけた。5年後ぐらいでしょうか……あっと驚くような選手になってても、僕はぜんぜんおかしくないと思うんですよ」

 マシンバッティングを終えて引き上げていく背番号55を見送るように遠くに眺めながら、話の中味は熱を帯びても、語り口は終始控えめ。抑えた感じが、逆に説得力となって伝わってくる。

よい人がスカウトになった。

「あ、お気をつけてお帰りください」

 室内練習場から外に出る間際、そう言って、やはりいつものようにわざわざ歩を止めて、荒金スカウトが一度軽く声をかけてくれた。

 今夜の便で帰京することは、話の中で告げてあった。

 ソフトバンク三軍で人知れず鍛える無名の逸材の存在と、日本の美しい作法の存在を、私は彼から教えてもらったような気がした。

 よい人がスカウトになった……。

 私自身がずっとなりたくてしょうがなかった職業だったせいか、なんだか無性にうれしかった。

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