マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
SBの三軍で日本を驚かせる準備中。
茶谷健太と荒金久雄の5カ年計画。
posted2017/02/17 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
メイン球場からブルペンに戻ってみたが、もう誰も投げていなかった。
ならば、こっちはどうなってるのかな……と隣りの室内練習場の重いトビラをガラガラと開けた途端、目の前でしゃがんでいたトレーニングウェア姿がスッと真っすぐに立ち上がって、軽く頭を下げてくれる。
この国には、目礼という美しい挨拶があることを思い出させてくれた。
ソフトバンク関東地区担当スカウト・荒金久雄。
この人は、いつもこうだ。
どこの球場で出会った時も、こちらのほうにきちんと体を向き直してから挨拶を返してくれる。
大分の中学からPL学園に進み、青山学院大の4年間も併せて、俊足・好守の外野手として活躍し、2000年ドラフト5位でダイエー(現ソフトバンク)に入団した。
スリムなユニフォーム姿に全身のバネの効いたベースランニング、そしてしぶといチームバッティング。とりわけ、内野手のメカニズムを持った敏捷で正確なスローイングは、今でもはっきりと記憶に残っている。2012年で現役を上がり、スカウトになって今季5年目になる。
「バットに当てるぐらいはできると思う」
3人の若手選手たちがマシンバッティングをしている“鳥かご”の後方。しゃがんだままの姿勢で、その真ん中で打っている選手の様子をじっと見つめている。
荒金さんは打たないんですか……?
ユニフォームの記憶がまだあまりに新しいから、思わずそんな“煽り”を入れてしまった。
「いやっ、僕なんか、もう……」
ダメですよ、と続くのかと思ったら、
「バットに当てるぐらいはできると思いますが……」
照れて笑いながら、それでも“ほんとのところ”を返してくれるのがとても若々しい。