マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
SBの三軍で日本を驚かせる準備中。
茶谷健太と荒金久雄の5カ年計画。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/02/17 07:00
ソフトバンクの野手専念組としては、今宮健太が近年の成功例。茶谷健太(後列右から3番目)も後に続けるか。
高校では練習していなかったバッティングが、いまや。
真ん中で打っている選手の背番号が55と見えた。マシンから放たれる130キロ後半ほどのボールを、巧みなリストワークとバットコントロールを駆使して芯でとらえ、弾き返す。中でも、バットの出しにくい内角高目を、両腕とグリップの作る三角形を崩さずに捉えて弾き返す技術など、横のケージで打っている江川智晃の“一軍のテクニック”にもなんら遜色なく見えていた。
茶谷健太内野手。
2015年のドラフト4位。山梨・帝京三高では大型右腕として注目されたが、ソフトバンクは当初から野手としての可能性を察知。1年目の昨季は三塁手として、二軍、三軍の実戦で経験を重ねた。
「あれで、高校時代はほとんどバッティングの練習をしなかったらしいんですよ。エースで投げてましたから」
最後の夏が終わり、“次”に備えて木製バットでバッティング練習をしている場面を見て、あらためてその能力を見直したという。
「去年1年よく頑張って、サードはもう守れます。ただ僕自身は、セカンドで上手くなってくれないかなと思ってて……」
セカンドなら、アメリカの可能性もある存在。
185センチ85キロ。今のプロ野球にはいない異色の二塁手誕生の想像図を、一瞬、頭に描いてみた。
「僕としては、セカンドなら、アメリカの可能性もあるんじゃないかと……」
アメリカのところが、ア、メ、リ、カと聞こえていた。
「もちろん、チームがどう考えるかは別ですよ。あくまでも、僕個人のロマンとして、ですけどね」
控えめな物言い。抑制の効いた冷静な言葉の調子。ロマンという言葉を、野球の人から初めて聞いたような気がする。
スカウトはロマンチストがいい。