167cmの富樫が、人生初のダンクを成功!?

　千葉や栃木とくらべればそれほど人気が高いわけではないチームのエースである彼が、SNSでかくも多くのフォロワーを集めるのは、そんなサービス精神とも無縁ではないだろう。彼の言葉には、プロとしての重みがあるのだ。

「オールスターは独特で、途中でグダっとなるところもありがちだと思うんですけど、富樫がしっかりと引き締めてくれましたし、盛り上げるところで盛り上げてくれましたから。長い1日ではありましたけど、本当に良いオールスターを経験できたと思っています」

　そんなオールスターで、日本のバスケットボールの新時代を象徴するシーンが生まれたのは、第3クォーター、残り1分40秒を切った頃だった。

　名古屋ダイヤモンドドルフィンズに所属するジャスティン・バーレル（ニックネームはJ・B）がゴール下で待ちかまえ、富樫が勢いよくドリブルしていく。J・Bに持ち上げられる形で、富樫の身体が宙を舞った。

　田臥勇太に次ぎ、日本人として史上2人目でNBAのチームに登録された経験を持つ逸材は、こうして、人生初めてのダンクをたたき込んだ。

「ダンクをしたい」と相談して、後はアイコンタクト。

　選手を担いでダンクシュートを決めさせるなど……まるで、マンガの世界である。

　オールスター戦とはいえ、なぜそんな難しいダンクシュートを決めることが出来たのか――その理由はひと言で表せる。

　ファンを喜ばせるために普段からしっかり準備をしていたからだ、と。

「『ダンクをしたい』とJ・Bと相談はしていました。あとは、もう、試合中のアイコンタクトで」

　富樫は、サラッと言ってのけた。

　中学を卒業してアメリカに渡った富樫は、バスケットボールの本場において“本物のプロ”アスリートの姿勢を学んで来たのかもしれない。

　所属する千葉ジェッツのホームで行われた、11月19日の試合でも、大晦日の試合でも、最高のパフォーマンスを出すための情熱は溢れていた。

【次ページ】　試合前の準備でも、富樫はひと味違う。