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167cmの選手が人生初のダンク成功!?
田臥に並ぶBリーグの“顔”富樫勇樹。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2017/01/17 08:00
田臥勇太と富樫勇樹はBリーグの2枚看板と言っていいだろう。2人合わせて340cm、まさに小さな巨人たちである。
田臥ではなく、オールスターMVPは富樫だった。
昨年のクリスマスの夜のこと。試合を終え、ストレッチをして、多くの記者の取材に答えた後、彼には向かったところがあった。
そこにいたのは、バスケットボールをしているという中学生たちだった。疲れたそぶりを見せずに田臥は、10人ほどのバスケ少年たちの質問に、1つずつ丁寧に答えていった。スーパースターを前に直立不動で緊張している様子をみて、「少し、リラックスしよっか」と笑顔で声をかけてたりも……。彼らが、まるでサンタクロースからのプレゼントをもらったかのような表情を浮かべていたのは言うまでもない。
そんな田臥は、プロのアスリートとして特別入念な準備をすることで知られている。練習の始まる2時間も前に体育館に入り、足の指の裏のストレッチをする。ケガを防ぐために、シューズの靴ひもの結び方にもこだわる。
「(富樫と)普段は敵として戦っていますけど、今日はチームメイトとして戦ったので、チームメイトがMVPをとってくれて、本当に嬉しく思います」
そう語った田臥を差し置いて、富樫がMVPに選ばれたのは、新しい時代の幕開けをつげる出来事なのかもしれない。
そんな2人が1月18日にはリーグ戦であいまみえるのだから、出来すぎたシナリオでもある。
田臥が1人で背負ってきたものを、今度は2人で。
もっとも、これで新旧のスターが入れ替わった、というわけではない。むしろ、それでは困るのだ。
田臥が日本バスケ界の顔となり、リーグを盛り上げるための宣伝活動を一手に引き受けてきたものを共に背負えるような選手がまた1人生まれた――と言えるようにならなければ。
開幕から半年もたっていないプロバスケットボールの火を消さないためには、『顔役』が何人いても足りないくらいだ。
田臥は言う。
「これだけのお客さんが集まってくれたのは、今まで本当になかったこと。もっと、もっと、たくさんの人に見てもらえるように、もっと、もっと、頑張っていかないといけないなと思います」