3Pコンテストでも、ライバルに大声援を送る富樫。

　富樫と同じくらいにこの日のオールスターを盛り上げた、田口成浩という選手がいる。

　彼もまた、富樫がノーザンハピネッツでプレーしていたときのチームメイトだ。田口は、試合前に行われた3Pコンテンストで優勝した感想について記者会見で問われると、こんな風に答えた。

「5カ所目（3Pコンテストは5カ所から、計25回のシュートをする）で打っているときに後ろの人たちから『いける、いける！』みたいな声援もあったので。まぁ、特に富樫選手ですね！　そういう声も聞こえたので、そういう応援もあったので、最後の1本が入ってくれたのかなと思います」

　そして、富樫の方を向き、笑みをうかべて声をかけた。

「ありがとう！」

　会場が爆笑に包まれたのは言うまでもない。

田臥勇太という、日本バスケ界の象徴のような存在。

　Bリーグが始まってから、多くのことが変わった。バスケットボールにかかわる多くの人たちが、プロであることに自覚的になった。

　とはいえ、試合開始のタイミングが分からないような演出だったり、試合後の選手取材を厳しく制限したりするチームはいまだにある。選手のコンディションを考えれば、ファンサービスもメディアへの対応もないほうがいいというのは、ある意味では正しい。

　しかし、それは「プロではない」。

　20世紀の実業団のスタイルだ。

　それに引きかえ、富樫はどうか。

　例えば、大晦日に行なわれた川崎との試合後のこと。その後にファンのためのサイン会に参加し、GMとミーティングを行ない、さらに取材へ応じるときも、記者の質問が途切れるまで丁寧に答え続けて……プロとは、そういう選手やクラブのことを言うのである。

　バスケットボール、日本、プロ、という3つのキーワードを聞いて、ほとんどの人の頭にすぐに浮かぶのはやはり、オールスターで富樫とともにB.BLACKというチームのガードとして共演した、田臥勇太の名前だろう。

　彼が身を粉にして、バスケットボール界を盛り上げようとしてきたのは、ここで説明するまでもない。そんな田臥が尊敬できるのは、華やかな場所ではなくともまったく態度を変えないことだ。

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