“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
前回の高校選手権のヒーローは今?
神谷優太、小川航基の2016年シーズン。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/01/02 07:00
神谷(左)も小川も5月のFIFA U-20W杯で活躍し、世界への飛躍を目論む。世界基準の選手になれるかなれないか……大きな岐路に立つ。
Jリーガーとなった小川を待っていた、プロの試練。
ピッチ上で茫然自失となっていた小川だったが、試合後には「本当に悪夢だったけど、これは『もっと頑張れよ』と言ってくれたようなもの。ポジティブに捉えています」と、気丈にコメントしていた。
プロ入りしてからの小川は、ルーキーイヤーで出番を掴んだ神谷とは対照的に分厚い壁に直面することとなった。
点を獲ることに専念が出来た高校時代、ユース代表とは異なり、中盤まで落ちてボールを受けて、捌きながら前に出て行くことを求めるプロのクオリティ、そして名波浩監督の要求にうまく応えられなかったのである。
「自分に足りない部分があることは間違いない」と自覚こそしているものの、考えたことがそのまますぐこなせるほど、プロの世界は甘くはなかった。2016年シーズン、彼はJ1リーグ戦で1度もプレー出来ず、ナビスコカップでの途中出場の2試合、合計47分間のプレーに留まった。
だが、彼の中で大きかったのがU-19日本代表の存在だった。前述したように、U-19日本代表の内山篤監督が小川に求めたのは、シンプルに点を獲ることだった。
「もちろん、いろんなことが出来るFWになって欲しい。だが、まだそれが出来ない以上、彼には得点を獲るためのプレーをしてもらいたい」(内山監督)
高校選手権の悲劇を力に変え、U-19選手権で初優勝!
迎えたAFC U-19選手権では、初戦でチームのオープニングゴールを決めると、準々決勝のタジキスタン戦で2ゴール。大会通算3得点を挙げ、エースとしてチームを牽引した。
何より、サッカーの神様は彼に、苦しんだルーキーイヤーと選手権での悪夢を払拭するシーンを与えてくれた。
サウジアラビアとの決勝戦。
日本の初優勝がかかったこの一戦は延長戦でも勝負がつかず、0-0のままPK戦に突入していた。
4人全員成功で迎えた5人目として、小川に出番が回って来た。後攻のサウジは4人目が外し、決めれば勝ち、優勝のシチュエーション。彼の頭の中に、青森山田戦がよぎっているのではないかと心配したが、彼の表情はリラックスしていた。
「篤さん(内山監督)が僕を5人目に任命をしてくれた。それが嬉しかったし、自分が決めれば勝って、初優勝という流れは、本当に出来過ぎなシナリオというか、凄くありがたかった。正直、素直に嬉しかったんです。みんなの雰囲気も良かったし、もう迷わず蹴ることが出来た」
正確にミートしたボールは、狙い通りのコースを描いてゴールに突き刺さり、AFC U-19選手権初制覇を導いた。