精神的に一回りも二回りも大きくなっていた神谷。

「（日の丸を）背負いたくても背負えない選手がいるので、責任を持って結果を残していきたい。最終予選も初めてなので、どういうところか分かりませんが、湘南に来てから、チョウさんに相当メンタル面を鍛えられたし、高校でも諦めない気持ちを叩き込まれたので、そこを大事にして、必ず世界のキップを勝ち取ってきたい」（神谷）

　10月のAFC U-19選手権に出場した神谷だが、この大会で大きな試練に見舞われる。

　初戦からボランチとしてスタメン出場を果たしたものの、第2戦のイラン戦で接触プレーの際に左ひざを負傷。フル出場した試合後の検査で膝の皿骨の骨折が発覚し、その後の出場が不可能となったのだ。

　神谷は結局、U-20W杯出場を決めた準々決勝のタジキスタン戦を見届けてから帰国の途に就いた。

「世界（FIFA U-20W杯出場）を決めてくれたのでひと安心ですし、今大会、初戦のFK（キッカーは神谷だった）からのゴールが生まれてなかったら、もしかしたら初戦で負けていたかもしれないので、貢献することは出来たと思う。この怪我はもしかしたらサッカーの神様から送られたメッセージなのかもしれない、って思っています。接触プレーのシーンも、もっと状況判断やプレーの質が良かったら、避けられたかもしれない。身体作りを含めて、もっと一生懸命にサッカーに打ち込めというメッセージだと思う」

　相当な想いで臨んでいた大会だっただけに、無念の気持ちはあったろう。そんな姿を見かけ、「本当に我慢強く、思慮深い人間になったね」と声を掛けると、「ありがとうございます。これが青森で教えてもらった一番大事なことですから」と笑顔で返してくれた。

　神谷は今、賢明なリハビリに励んでいる。

ハットトリックを決めてド派手な活躍となるはずが……。

　2人目は、その神谷率いる青森山田に3回戦で敗れた桐光学園のFW小川航基だ。

　小川は青森山田戦でも、ずば抜けた存在感を見せていた。この試合では自らの2得点で2－0とリードした後半、飛び出したGK廣末陸に倒されてPKを獲得し、キッカーに自ら名乗り出た。これを決めれば勝負がほぼ決まり、ハットトリックとド派手な活躍となるはずだった。

　しかし、放ったキックはバーの上を越えていった。ここで勝負の歯車は大きく狂った。

　するとチームは、後半アディショナルタイムの5分間でまさかの2失点。同点ゴールはまさにラストプレーから生まれたものだった。さらにPK戦では今度はGK廣末のセーブに合い、悪夢としか言いようが無い結末で、彼の高校サッカーは幕を閉じた。

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