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小笠原満男が絵馬に書いた「世界一」。
レアル相手でも、ひょっとしたら……。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byAFLO
posted2016/12/17 11:00
小笠原満男は、誰よりもタイトルを持ちながら、誰よりも負けず嫌いのままでい続けている。彼の背中を見て、若手もそう育っていくのだ。
普通の選手は、タイトルを獲ると一度落ち着く。
Number917・918号に掲載したインタビューでも、小笠原はチャンピオンシップ優勝直後にも関わらず、何度も何度も「これで満足しちゃいけない」「この先が大事」と口にした。
この人は、なぜ何歳になっても貪欲でいられるんだろう。取材中、思わず聞いた。
小笠原選手ほど何回も優勝を経験していたら、すぐにまたモチベーションを上げるのは、大変じゃないですか?
闘将は、笑顔とともに即答した。
「大変じゃないっす。タイトルを獲る喜びを、一度、味わっちゃうとね。言葉にするのは難しいけど、優勝して嬉しいというよりも、またあそこに行きたいって思う。これは、Jリーグで3連覇した頃と変わらない。チャンピオンシップが終わったら、すぐにクラブW杯があって、天皇杯がある。周りからは忙しいように見えるかもしれないけど、またタイトルを獲る喜びを味わうチャンスがあるって思えば、楽しみでしょうがないですよ」
鹿島の25年の歴史で、紛れもなく最強の相手。
チャンピオンシップ優勝からわずか2週間後、再びタイトル獲得の喜びを味わうビッグチャンスがやって来た。ただし、相手はあのレアル・マドリーだ。鹿島のクラブ創設25年の歴史の中でも、最強の相手であることは間違いない。
だからこそ、問われるのは「割り切り力」だろう。チャンピオンシップ後のインタビューで、小笠原は勝因をこう語っている。
「常にスタイルを変えないチームもあるけど、チャンピオンシップのような勝負事では、絶対に割り切りも必要になる。守るときは、守る。例えば日本代表でも、サッカーのスタイルについてみんな議論するけど、やっぱりアジア予選で格下と戦う場合と、W杯本大会でブラジルと戦う場合とでは、展開も戦い方も違う。そういう駆け引きや試合運びは、もっと覚えるべきだと思うし、俺がこのチームで一番学んだことだから」
おそらくクラブW杯決勝で、鹿島がボールを支配して相手を押し込む時間帯は、ほとんどないはず。その中で、いかに選手全員が「割り切り」、レアルの暴風雨のような攻撃を我慢強く耐えることができるか。そして嵐の中でもファイティングポーズを取り続け、強烈なカウンターパンチを繰り出すことができるか。