マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
阪神8位・藤谷洸介は田中正義級!?
ギータを抑えた角度と球威は本物。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/12/07 07:00
サイズ感がある投手がマウンドに立つだけでも、打者にとっては脅威となる。藤谷は甲子園の地でそのアドバンテージを生かせるか。
だいじょうぶかな。ずいぶんと、先物買いだな。
読み上げられた名前を聞いて、2月の記憶がサッとよみがえる。
マウンド上、ビュービュー吹き抜ける冬の宮崎の寒風の中で、マウンドに立ちはだかっていたヒョロ長いユニフォーム姿も思い浮かんだ。
だいじょうぶかな。ずいぶんと、先物買いだな……。たより無さのほうが前に立っていた。
ドラフトから2週間が経とうとしていた。
大阪・京セラドーム、社会人野球・日本選手権。
秋の全国大会だ。都市対抗とは違って補強選手の力を借りずに、本来のメンバーだけで覇権を争う正真正銘の“チーム対抗”だ。
春から10キロ以上増量して“筋肉の鎧”を装着。
JFE西日本と顔を合わせたパナソニックの先発が藤谷で驚いた。
この大会、確かに来シーズンの試金石という性格もある。ドラフトが終わった後の大会だから、プロに進む選手のポジションには、来季以降を期待する新戦力を使ってみたりするのだが、それでも、年にたった2回の全国である。どのチームも、生半可な選手は使ってこない。
その先発に抜擢された藤谷洸介が初回のマウンドに上がるのを見て、もう一度驚いた。誰かに似ていると思ったが、答えが出ない。
堂々のユニフォーム姿。
春はユニフォームに着られていた藤谷洸介が、ユニフォームを内側から圧するような“筋肉の鎧”を身にまとって、秋の京セラドームにやって来た。
春から10キロ以上増やしてきたという。それでいて、全身の均整を崩していない。
理にかなった、注意深いウェイトアップ、パワーアップを図ってきたのだろう。