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阪神8位・藤谷洸介は田中正義級!?
ギータを抑えた角度と球威は本物。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/12/07 07:00
サイズ感がある投手がマウンドに立つだけでも、打者にとっては脅威となる。藤谷は甲子園の地でそのアドバンテージを生かせるか。
速球とチェンジアップで折ったバットは3本。
立ち上がりは、100の力で100のボールを投げようとして、70のボールしか行かない。そんな若さが見え過ぎて行く末が案じられたが、エンジンの温まってきた3回あたりからは、142~144キロの速球にチェンジアップの緩急が60%後半のコントロール率で捕手の構えたミットにきまっていく。
左足でプレート三塁側を踏んでいるのに、左打者の足元、右打者の外角低目にきまる球筋。これが、いちばん良い。サウスポーのクロスファイアーの球筋を鏡に映して反転させたような球筋。しかも、3メートル以上の高さから投げ下ろしてくる角度がそれに加わる。
速球とチェンジアップで左打者のバットを3本折って、いよいよピッチングに勢いが乗ると、194センチの長い手足の躍動感も一気に増す。
なんだか、魅力いっぱいのピッチャーになってきたなぁ。
田中正義のデカいユニフォーム姿と重なって見えた。
一塁ゴロ、二塁ゴロの一塁ベースカバーのスピードや野手との距離感の良さなんか、田中正義(創価大)もこのぐらい思いきりよく動けるようになったらいいなぁ……。
思い出した、田中正義だ。
田中正義のデカさだ。
初回のマウンドで見た堂々のユニフォーム姿は、田中正義が重なって見えていたのだ。
山口・周防大島高校出身。
あっ! と思った。もう1つ、思い出したことがあった。
「正義もすごいピッチャーになっていくんだろうけど、ほんとは正義の1年下にも、同じぐらい面白いピッチャーがいてねぇ。ウチには来てくれなかったんだけどねぇ」
創価大・岸雅司監督は山口の周防大島の出身なのだ。郷里の小さな高校で見つけた田中正義クラスの未完の大器。
それが藤谷洸介だった。