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大迫勇也「僕は時間がかかるから」
丁寧に積んだ能力と自信で決戦へ。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/11/15 08:00

大迫勇也「僕は時間がかかるから」丁寧に積んだ能力と自信で決戦へ。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

代表復帰のオマーン戦でいきなりの2ゴール。大迫勇也は、有無を言わせぬ結果を残してみせた。あとは監督の判断だけだ。

「僕は時間がかかる、鹿島でも3年間はダメだった」

 1年半もの間、代表とは無縁だった。そして、ケルンで過ごした時間も順風満帆だったわけではない。クラブでうまくいかず、代表にも呼ばれない。逃げ場はなかった。ケルンでの状況をなんとか変えることしか、大迫に選択肢はなかった。

「試合に出られない、うまくいかないから移籍するとか、考えたら終わりでしょ。ここ(ケルン)でダメなら、どこへ行ったってダメだろうし。こっちでやっていると誰も助けてはくれない。日本ならピッチ内のプレーで助けてくれる選手もいるけど。でも、そうやってひとりで戦っていくことに面白さを感じるようにもなった。僕は時間がかかるから、鹿島でも3年間はダメだったしね」

 目の前の苦境をどう好転させるか? ただそれだけにこだわり、集中し、チャレンジし続けた。代表から外れていた時間は、大迫にとって貴重な時間となった。欧州で戦えるストライカーとしての土台を築くことができた。

サウジ戦は、世代交代のターニングポイントか。

 格下オマーンとの親善試合。その結果だけで、大迫が日本代表の救世主だと断言するのはまだ早いだろう。この試合ではトップ下に名パサーの清武がいたことも、彼にとって大きなアドバンテージになっていたからだ。大迫本人も語っている。

「FW1人ではどうにもならないですからね。周りとの関係がないとダメですし、今日はキヨくんが僕のことを見てくれたから、うまくゴールに向かうことができた。大事なのは次だから。まだまだこれからです」

 初戦に敗れたことで、アジア最終予選を戦う日本に余裕がなくなった。ひとつも落とせないという状況で、選手を試す機会が奪われているのが現状だ。そんな中での親善試合。相手を考えると、大迫の活躍もケルンでの彼を見ていれば、想定内だったともいえる。

 ハリルホジッチ監督が代表選手たちに抱く信頼の度合いは、当然過去の試合で勝ち点をもたらしてくれた選手たちのほうが、大迫よりも高いこともまたひとつの真実だ。

 引き分けも避けたいサウジアラビア戦で、指揮官は大迫を、そして清武を起用するのか? その采配は今後の日本代表を考えるうえで重要なポイントになるだろう。

 そしてピッチへ送り出された彼らが結果を残し初めて、世代交代という流れが加速する。

 サウジアラビア戦は、アジア最終予選を占うだけでなく、日本代表のターニングポイントになる可能性を持つ試合になりそうだ。

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