マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
唯一の10位指名、ドラフト最後の男。
西口直人に期待する“甲賀”の恩師。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/11/06 11:00
指名を受けてのコメントでは「真っ直ぐで押せる投手になりたい。楽天の則本昂大投手のような投手に」と語った西口。
星野仙一の「ええピッチャーやないか」にすがるように。
ものすごく期待しているという。
「それだけの期待に値するものを持ってますよ、西口は。まだ十分に体ができていないのに、今年はスピードも149キロまで伸びたし、それ以上に速球の質がいい。社会人の一流どころ相手でも、ストレートで空振りの三振とってきてますからね、今年は」
送り出す者の心に、1位も5位も10位もない。あるのは、一様に、先の“幸せ”を願う心、ただ1つ。
「自分をコントロールできる人間だけが生き残れるんです。活躍してるピッチャー、長生きしてるピッチャーのどこが違うんか。そこを早く理解してほしい。そこがわからんと、ウロウロするばかりやから……。間違いなく、いいものは持ってるんです。星野(仙一・楽天副会長)さんかて、ええピッチャーやないか、言うてくれたらしいですよ、西口のビデオ見て」
正直、すがるような思いもあるはずだ。
教え子を語る監督・藤本政男の口ぶりが、15年前の取材のあの時よりだいぶ丸く、やさしくなったように思えた。
野球専門学校にも、“秋”がやって来ていた。