球道雑記BACK NUMBER
“ドラ1”兄へのライバル心は今や昔。
ロッテ大嶺翔太に漂う覚醒の気配。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/09/14 08:00
公式サイトのアンケートでは「釣り」が特技だと語る大嶺翔太。石垣島出身の有望株は“出世魚”となれるだろうか。
打撃を改善するために改善した2つの意識とは?
そう答える彼に、ドラフト後「別のチームで対戦したい」と漏らしたころの、兄に対するライバル心は存在しない。兄を変に意識することも、比較することもない。今の自分を信じているからこそ、信じるだけの努力をこの7年間続けてきたからこそ、ファンも翔太を「大嶺祐太の弟」としてではなく、一選手として見るようになった。本当の意味で兄と肩を並べる存在になったと言えるだろう。
'14年に初の一軍昇格を果たし16試合に出場、'15年にはさらに数字を伸ばして41試合に出場した翔太だが、打席数は出場試合数に比例することなく横ばい。再度、自身の打撃を見直そうと昨年の秋からあることに取り組んだ。
「僕はどちらかというとフォームが前に流れる……突っ込む癖があったんです。それをどうにか右足で我慢できるようにしてスイングをする練習と、一番、力が入るポイントのお腹の前でバットのヘッドが返るような意識、その2つを考えるようにしました」
「数字にはあまり固執せずに、自分の感覚で……」
参考にしたのは昨年、打率.317、本塁打15を記録して一躍ブレイクした清田育宏だ。'09年の同期入団で、当時から実の兄のように慕ってきた先輩である。今春の石垣島キャンプでは自分の打撃に対する考えを清田に伝え、助言を授かることもあった。
「(調子は)今でも良かったり、悪かったりですよね。バッティングはいい選手でも10回中7回は失敗するものなので、数字にはあまり固執せずに、自分の感覚……打ち終わりとか、ボールの見逃し方だとかそういうのを意識しています。そこは昨年と比べても全然悪くないし、結果が出ていなくても今は気にすることではないと思っています。今、自分のやっていることを信じて、今後、いかに打席の中で結果に繋げるかだと考えています」
春先はファームにいることが多かった大嶺翔の状態は、けっして悪くなかった。
ルーキーの平沢大河や新外国人ヤマイコ・ナバーロの加入で、内野の定位置争いは昨年以上に激化したが、そこで自身を見失うことなく努力を続けてきた結果、彼は、彼のイメージどおりのバッティングにたどり着く。