球道雑記BACK NUMBER
“ドラ1”兄へのライバル心は今や昔。
ロッテ大嶺翔太に漂う覚醒の気配。
posted2016/09/14 08:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
これで肩の荷が1つ降りたのではなかろうか。
昨年の5月10日、兄・大嶺祐太と初めて兄弟揃ってのお立ち台に上がった弟・大嶺翔太の姿を見て、ふとそんなことを考えた。
甲子園で“八重山旋風”を巻き起こして、プロ1年目から一軍デビューを果たした兄、一方で高校時代は甲子園出場の経験がなく、プロに入っても一軍デビューまで5年の月日を要した弟。
「出来ることなら他球団に入って兄と対戦したかった」
'09年のドラフト会議の指名直後に思わず出た本音も、大嶺祐太の弟だから自分はプロに入ったのではない。自分の力でここにたどり着いたと、証明したいがために出た言葉のように思えた。
とは言え、弟の翔太が、兄の祐太を嫌っていたかと言うとけっしてそうではない。
「石垣島にいる祖父と祖母に恩返しがしたい」
兄をライバル視していたとされる入団1年目のころ、彼は冗談交じりにこんなことを筆者に漏らした。
「家にいるときの兄は、昔から自分(翔太)の買ってきたジャージやトレパンを勝手に着たり、履いたりするんですよ。ホント勘弁してほしいですよね」
言葉だけをとれば一見、愚痴を漏らしているようにも思えるが、筆者にはそれだけ仲の良い兄弟のエピソードのように思えた。冒頭でも触れた2人で立った初のお立ち台の場面でも、兄の祐太は弟と並ぶ自分の姿に、目を潤ませていたようにも見えた。何かこみ上げてくる想いがあったに違いない。
弟の翔太も言う。
「兄が(千葉ロッテに)いたから今の自分があると思っています。だから今は兄と一緒に一軍で活躍して、石垣島にいる祖父と祖母に恩返しがしたいんです」