セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
本気でCL優勝を狙うユーベの超補強。
「最後に笑うのは技術志向のチーム」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/07/28 11:30
ダニエウ・アウベスはユベントスの4バックオプションを格段に強化する。戦術的多様性も全ては欧州制覇のために。
クラブ間交渉の前に、本人を口説き落とす。
「第一に詰めるべきは、選手の意思だ」
ユベントスの補強戦略を取り仕切るマロッタCEOは、クラブ間交渉をもちかける前に、まず獲得目標とする選手本人を口説き落としにかかる。それが彼流のセオリーだ。
1人の選手を獲得することは、しばしば婚姻関係に喩えられる。
マロッタは、目標とする選手にチームの掲げるコンセプトを懇切丁寧に説明し、ユーベと一蓮托生となれるかどうかを問いかける。そこで、選手本人を納得させることができれば、移籍金の多寡を含めたクラブ同士の話はどうとでもなる。
倹約姿勢が有名だったからこそ、今夏は驚き。
欧州を代表する名門の一つでありながら、ユベントスは移籍市場で堅実な補強方針を貫いてきた。
15年前、当時の史上最高額である1500億リラ(約75億円)でMFジダンをR・マドリーへ売却したときも、浮かれることなくGKブッフォンやDFテュラム、MFネドベドらを手堅く買い揃え、後年に続くチームの基盤作りの資金源とした。
当時とは経営陣も選手の顔ぶれも変わったが、移籍市場で派手な散財をしない点は、ユーベ式経営の美徳であり続けた。彼らの倹約姿勢は、内外にも周知されていた。
だからこそ、8月の声を聞く前に1億4800万ユーロ(約173億円)をすでに費やした今夏の大盤振る舞いは、ユベンティーノたちや現所属選手たちにも驚きをもって受け止められている。
前代未聞の審判不正操作事件“カルチョーポリ”からも、10年のときが経った。
2006年に2部へ落ちた後、わずか10年で再び欧州の頂点を目指そうとするところまで這い上がってきたこと自体、驚くべきことだ。
5年前にオープンさせた自前スタジアムがもたらす現金収入と放映権収入、スポンサーマネーで、ユベントスの経営基盤は年を追うごとに盤石の度合いを強めている。