モラタに加えてポグバも売却できれば出費は最小限に。

　イグアイン獲得に9000万ユーロを費やしても、金庫には元々FWモラタ売却で得た3000万ユーロがあったし、さらに余剰戦力の放出によって最大7000万ユーロの収入が見込めるから、今夏の収支も決して大赤字にはならない。

　噂されるMFポグバのマンチェスター・Uへの売却も決まれば、高額移籍金ランクで新記録樹立が確実な1億2000万ユーロ(約140億円)が転がり込む。

　マロッタCEOが自慢げに語るのも無理はない。

「入団を頼み込んだトト（ディナターレ）に“ノー”と断られたのは、たった6年前のことだ。今では、ユーベに来たがる一流選手が列をなしてくれている」

　ユベントスへ入団した選手たちは、初日からクラブ内に満ちる名門の重みとどん底から這い上がった精神力を直観する。自分は特別なチームに来たのだと理解し、失敗は許されないのだと自らを戒める。

　MFピアニッチは、入団会見で「ここに来てまだ1週間だが、なぜローマが勝てないのかを理解した」と言い放ち、古巣のぬるま湯体質を暗に非難した。

新聞も、ユーベの6連覇を早くも予言。

　一流は一流を呼ぶ。セリエAで完全無欠のストライカーとなったFWイグアインまで加わったユベントスを止められるクラブは、もはやイタリア国内に存在しない。

「もちろんカンピオナートが長丁場であることはちがいない。しかし、イグアイン獲得は“チェックメイト”だ」

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、今季のカンピオナートがユーベの6連覇で投了することをすでに予言した。地元トリノの『トゥットスポルト』紙は、24日付の社説で「ドリームチームが誕生しつつある」とユベンティーノの期待をさらに煽った。

　ナポリとローマを骨抜きにしたユベントスが“バイエルン化”し、セリエAをつまらなくする、という批判は彼らの耳には入らない。ユーベの視線の先にあるのは、マドリーやミュンヘンだからだ。

　同胞イグアインの合流を待つFWディバラが「俺たちは今大会で優勝を狙う」と言えば、DFベナティアも「ユーベは今こそCLで優勝するときだ」と意気盛んに続く。

「CL優勝を本気で目指す」と言葉にできるのは、欧州でも限られたクラブと選手だけだ。最後に残されたタイトルを獲るために、いよいよ機は熟した。

　指揮官もフロントも選手たちも、“ドリームチーム”と化したユベントスは、欧州中を驚愕させようと腕を撫している。「マンマミーア！」の悲鳴が飛び交うであろうシーズンの開幕が待ちきれない。