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オコエ瑠偉と松井秀喜の共通点とは。
高卒ルーキーなら“フルスイング”!
posted2016/06/24 07:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
最近、楽天・オコエ瑠偉外野手に関する話を聞いて、巨人1年目の松井秀喜さんのことを思い出した。
星稜高校からドラフト1位で巨人に入った松井さんは、プロ1年目のシーズンに2回、ファーム落ちを経験している。
「キャンプの練習ではついていけるなという感じはあったんですけど、オープン戦でいきなり当たったヤクルトで先発が石井(一久)さんだったんです」
松井さんは当時、感じたプロの凄さをこう語っていた。
「カーブを投げられた瞬間に、見たことのないものを見たと思いました。ど真ん中のカーブ! それに僕は腰が引けましたから、ストレートだと思ったんです」
当時は一軍当落線上の投手だった石井に浴びせられたいきなりのプロの洗礼もあり、オープン戦では全く結果を残せず三振の山を築き、打率は1割にも届かなかった。
「上でやるのは当分、ムリですね」
長嶋茂雄監督はこう言うと、開幕直前にファーム落ちを言い渡したのだった。
末次二軍監督が授けたフルスイング指令。
「絶対に見返してやる!」
ファーム落ちを申し渡された松井さんはこう言って二軍に行くわけだが、そこで当時の末次利光二軍監督からかけられた言葉が忘れられなかったという。
「お前の1番の持ち味は遠くに飛ばすことなのだから、とにかく思いきってバットを振り切れ!」
そう言って末次監督は、松井にフルスイングを命じた。
そうして5月に一軍昇格を果たすと、昇格2試合目となる5月2日にヤクルト・高津臣吾投手からフルスイングでプロ1号を放ったのである。その後、6月に再び二軍落ちしてファーム暮らしをすることになるのだが、その時も末次監督が命じたのはひとつだけだった。
「フルスイングできる打者になれ!」
そうして8月末に再昇格を果たしたときから、松井さんのスラッガー人生が本格始動するわけである。