セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
親善試合は完敗、EURO本大会は圧勝。
ベルギーを破ったイタリアの本番力。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/06/15 11:30
ボヌッチを中心にキエッリーニ、バルザーリが脇を固めるイタリアの3バックは、まさに「壁」だ。
敗戦とランキング下落に堪えて、対策を練ってきた。
打ちつ打たれつの好ゲームで、ベルギーが同点に追いつくチャンスは何度もあった。ビルモッツが誇る若人たちの個々の能力は完全にイタリアを上回っていた。
2年前にコンテが就任して以降、アズーリは親善試合で強豪国に勝ったことがない。
7カ月前のブリュッセルでの敗戦の前には、ポルトガルにも敗れた。加えて、今年3月のドイツ戦では4失点の大敗を喫している。
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しかしテストマッチは本来、絶対に結果を残すべきゲームに向けての実験と分析の場だ。コンテと選手たちは、敗戦への批判とランキング下落の恥辱に堪えながら、強豪国対策を頭と肌に叩き込んできた。
そうやって鍛え上げた守備の職人技は、本番で嘘をつかなかった。
ベルギーは、バイタルエリアに送り込んだ194cmのMFフェライニに高いボールを当てることで守備ラインの攻略を試みた。だが、あらゆるトライは徒労に終わった。
MFフェライニの前にはDFキエッリーニが、背後にはDFボヌッチが構えていた。つねに前後2枚で挟み込み、相手の攻撃の芽を粛々と摘みとった。何の記録にも残らなくとも、彼らはイタリア流守備術の神髄を見せたのだ。
4枚のイエローカードをもらいながら、会心の勝利。
真剣勝負の場では、老獪さと狡猾さもモノを言った。
目前にスペースを見つけたボールホルダーは、絶対に逃してはならない。DFキエッリーニもDFボヌッチも、途中出場のMFモッタも、躊躇いなくファウルで止めた。
イタリアは4枚のイエローカードをもらったが、清廉潔白なベルギーが受けた警告は、ロスタイムに入ってからDFベルトンゲンが受けたわずか1枚だけだった。
耐えて凌いだ末に、93分のカウンターからFWペッレがとどめの2点目となる右足ボレーを叩き込んだ。
イタリアベンチからは全員が飛び出した。ブラジルW杯のときにはなかった光景だ。
全員で守り、一撃にかけた。アズーリ会心の勝利だった。
「今夜、選手たちは自分たちが何者であるかを示してくれた。スタメンや途中出場した者だけでなく、23人の選手全員に敬意を払いたい」
コンテは試合後、選手たちをひとしきり褒めたが、すぐに「喜ぶのはここまでだ」と居直った。「我々の目標であるグループ突破に向け、地に足をつけて戦っていく」とスウェーデン戦に向けてすぐに釘を刺すあたりが、コンテが闘将とされる所以だろう。