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武藤嘉紀「俺、ここから大爆発だから」
古巣の練習場で溢れ出た言葉と思い。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2016/06/13 11:40
武藤嘉紀はまさにシンデレラボーイだった。ケガという初めての大きな挫折から帰ってきた時、彼は何を新たに手にしているのだろうか。
「野菜が嫌いだったけど、食べるようになったよ(笑)」
――慎重な自分と、勝負をかける自分。チェルシーではなくマインツを選択した時は、しっかり積み重ねていく慎重さが自分と話していた。でも今度は勝負する時が来たと。
「この勝負の時というのも、本当に自分の勘で。誰にだって浮き沈みがある。その浮き沈みを少なくする努力はできる。でもいざ本当に勝負だという時は、人が変わる瞬間でもある。
食生活も変えたり、ヨガとか新たな試みもしたり。食生活はね、野菜が嫌いだったけど食べるようになったよ(笑)。食事の最初はいつも野菜から採っている。食べ順、食べ合わせも気にして。ブロッコリーとか正直まったく食べなかったけど、今は意識して食べている。ビタミンのあるパプリカも。
ケガしてからは、奥さんが本当にそういうことにも気を遣ってくれていた。だから2度目のケガをした時は、奥さんに一番申し訳なかった。食事ひとつと人は言うかもしれないけど、まだまだ自分は成長できるんだなということがわかった。やっていないことがたくさんある。体が動けるようになったから、走り方とかこれからコーチに教わって改善していく。
あと10年しか残されていないサッカー人生。
いろいろ人間は学ばないといけない。ある一定のところに止まっていると、成長はないと思う。新たなことを怖れずに試みて、それが合わなかったら止めればいいだけの話。とにかく成長するためのことは、これから何でもする。サッカー人生は短い。このあと10年ぐらいじゃないですか、平均を考えても。長い人生のうちであとそれだけしかない。だからその間だけは、自分に厳しくなって、やれることを全てやっていきたい。それが、ケガして一番思ったこと。
ということで、俺にとってはこの24歳になる年が、人生の分かれ道――。そう思っている」
そして、もう一度、自ら日本代表の話に戻した。焦りを感じるからこそ、芽生えた覚悟。武藤が初めて、ある決意の言葉を述べた。