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武藤嘉紀「俺、ここから大爆発だから」
古巣の練習場で溢れ出た言葉と思い。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2016/06/13 11:40
武藤嘉紀はまさにシンデレラボーイだった。ケガという初めての大きな挫折から帰ってきた時、彼は何を新たに手にしているのだろうか。
武藤「鍛えることを怖がると、成長も止まる」
元々、体つきは筋肉質、体内のコアマッスルも頑強なタイプだった。しかし、明らかに今の武藤は体つきが変わっている。特に上半身。大胸筋や肩から背中にかけての筋肉は盛り上がり、そしてしなやかでもあった。
この冬にドイツで取材した際、武藤は筋肉量を増やす計画を話していた。日本人は体を大きくすると武器である速さやキレを失う傾向があると言われるが、「筋肉をつけた分だけ、運動量も増やす。硬い筋肉ではなく、体に馴染ませるような筋肉にする。海外で戦うには必要なこと。鍛えることを怖がると、成長も止まる」と実体験を交えた話をしていた。
ケガでボールを蹴ることはできなかったが、この間に武藤は話していた肉体改造を実行していたのだった。
「あの時話したことを実践できる時だと思って。もちろん鍛えるだけじゃない。だからヨガも取り入れて、柔らかく、しなやかに体を大きくしている。でも服が全然入らなくなって。日本代表のスーツが今は着られない。(肩をすくめながら)こんな感じになっちゃう(笑)」
FC東京の仲間と歩いた道を、今は1人で。
練習は続く。フェイントを交えたドリブルメニュー、シャトルラン、さらにステップを交えたパスに、最後はシュート練習。ケガした右足の感触を、最後まで丁寧に確認しながら、約2時間のハードトレーニングが終了した。
グラウンドからロッカールームへ。かつてはFC東京のチームメートと歩き慣れた道。今はたった1人の練習を終え、芝生を踏みしめる。
振り返った武藤が、いきなり言い放ってきた。今までに聞いたことがないほど、ストレートな一言に思わず驚いた。
「俺ね、やってやりますからね。ここから大爆発だから」
今の思いを聞かせて欲しい。こちらの問いかけは、その一言で十分だった。武藤から溢れるように出てきた言葉を、ここに記したい。