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武藤嘉紀「俺、ここから大爆発だから」
古巣の練習場で溢れ出た言葉と思い。 

text by

西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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photograph byAFLO

posted2016/06/13 11:40

武藤嘉紀「俺、ここから大爆発だから」古巣の練習場で溢れ出た言葉と思い。<Number Web> photograph by AFLO

武藤嘉紀はまさにシンデレラボーイだった。ケガという初めての大きな挫折から帰ってきた時、彼は何を新たに手にしているのだろうか。

武藤の口から、今の思いがとめどなく溢れた。

「何て言うんかな……人には、必ず逃してはいけない時期、タイミングがあって。それを俺は結構小さい時から気づいていて。そういう要所、要所でチャンスをモノにすること。大きなチャンスを得られるところで失敗すると、やっぱり波に乗れない。

 一度波をつかめば、そこからはその大切さが感覚でわかってくる。受験とかもそうだし、やっぱり自分が行きたい高校や大学に受かるか受からないかによって、また楽しみ方も変わってくる。そこを逃すと知らず知らずにまた次のトライの時にプレッシャーがのしかかってくる。俺にとっては受験もそうだし、プロになってからの1年、2年もそうだった。日本代表監督が視察している試合でゴールを決めるとか。最低限以上には、自分はクリアできてきたと思う。チャンスをモノにできてきた。

 けど、いまこうやってケガもして、良い流れが自分から離れていった。W杯最終予選や本大会もこれからはある。ケガが明けてからのドイツ2年目のシーズンというのは、本当に俺のサッカー人生を左右する1年になる。そういう勘が自分に働いている。ここで活躍しなかったら、代表には定着できない。次のクラブへのステップアップも難しいと思う。

「点を取れなくなったら、それまでの選手」

 俺は最初から2年でマインツからステップアップしたいと思っていたから。やっぱり最初のシーズンは半年で悪くない結果を出せて、多少他のクラブから移籍の話も来た。その時点では環境に慣れて、ドイツで継続しながら力を付けたいから移籍はしなかった。でも2年目は相手も俺の動きがわかってきて、さらに点を取るのが難しくなる。そこでどれだけ点を取るか。やっぱりJリーグの2年目もプレッシャーがあるなかで、ゴールを取っていった。そういう流れは、繰り返さないといけない。

 点を取れなくなったら、それまでの選手。もう一段上のレベルの選手になるためには、代表でもクラブでも結果あるのみ。それだけ。

 サッカーが好きだし、サッカーを仕事にしているのに、それができない時期だった。代表にも入れない。代表はやっぱり特別な場所だと思った。焦り? もちろんあった。代表に関しては焦らない選手なんていないと思う。どんどん若い選手は出てくる。自分のライバルのアタッカーが結果を出したら、俺は置いて行かれる」

 あまりにも真っ直ぐな吐露だった。武藤は、脱いだばかりのスパイクを手にしたまま、隣にあったフェンスにもたれかかり話を続けた。

【次ページ】 「野菜が嫌いだったけど、食べるようになったよ(笑)」

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