サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
浅野拓磨が感じた五輪とA代表の差。
涙の後に成長するジンクスは続くか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/06/09 17:00
スピードタイプのFWというのは、日本代表でながらく大成していない、まさに鬼門である。浅野拓磨はその前例を破れるか。
ロッカーの雰囲気も五輪代表とは違う。
浅野自身もA代表での2試合は大きな経験になった。ひとつはサイドでのプレーだ。広島では1トップだが、今回は不慣れな右サイドの攻撃的MFとしてプレーした。
「普段やっていないのでサイドでプレーする難しさは感じますけど、自分の良さを出せば通用すると思っていましたし、今日も周囲の人がしっかりと合わせてくれて自分の良さを引き出そうとしてくれていた。結果に結びついていないですけど、裏を取るとかみんなにはこういう選手だというのを知ってもらえたと思うし、次につながると思います」
思った以上に、サイドでもやれていた。ボスニア・ヘルツェゴビナ戦ではハーフタイムにハリルホジッチ監督から「浅野をうまく使え」という指示が出ており、それくらい指揮官に鮮烈な印象を与えたということだ。
また、ロッカーなどではU-23日本代表と違う空気も味わった。
「試合前のロッカーは、試合に対する気持ちは同じですが、A代表の方が五輪代表とは違ってピリピリしています。試合に対する緊張感、責任感が張り詰めた中で過ごす感じですね。もちろんファンの注目度の高さや練習で細かいところを追求する意識の高さ、ひとつひとつのプレーの精度も違いますけど、国を背負って戦うという意識の強さはすごく感じました。五輪でもその思いはもっと強くもたなければいけないと感じましたね」
浅野にとって、今までなんとなく感じていたA代表へのイメージが、輪郭をともなって鮮明に見えたことはとても大きな収穫だったに違いない。
A代表の序列に波風を起こすことはできたか。
それだけに、最後のシーンで1点決めておけば、A代表の序列に多少は波風を起こすことができたのだが……。
「ブルガリア戦ではPKで点が取れたけどそれだけだったですし、ボスニア戦はフル出場したけど納得のいくプレーができなかった。もう危機感しかないです。自分はもっとやらないといけないと思いましたし、やれるという感覚も掴めました。でも、シュートせずに終わって負けてしまったんで、この悔しさを絶対に忘れずに次に生かせればと思う。次呼ばれるかどうか分からないですけど、切り替えてアピールするだけです」