プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・高橋監督は「甘ちゃん」ではない。
ベンチでの無表情さが、怖くて深い。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/05/03 09:00
今季初の3連敗をヤクルトに喫しても、「勝ったり負けたりはするわけだから」と動じず。
他球団のスコアラーが恐れる巨人の思い切り。
その間には、4月2日の広島戦(マツダ)で黒田博樹投手に完封負けを喫してからその後の7試合で4点、2点、3点、1点、2点、0点と極端に点の取れない期間もあった。実際、チーム打率2割5分6厘、チーム101得点はリーグ4位と決していいわけではないのが現状だ。
ただその一方で、4月26日の阪神戦(甲子園)の6回に5連打で藤浪晋太郎投手を攻略したように、打線のつながりの良さが目を引く。
「以前から、巨人は試合巧者というイメージがあった。ここぞというときの集中力の高さは強いチームの特長ですが、今年は特に狙い球が徹底されているように感じますね。しかもその球が来たら、どの選手も初球からでも思い切って振ってくる。現役時代の高橋監督がそうでしたから、その辺がチームとして徹底されている感じがあります。そういう点で攻撃力は数字以上のものを感じますね」
こう語っていたのはセ・リーグのある球団のスコアラーだった。
要は高橋監督の頑固さには「信」がある。
打てなくてもある程度の期間はその選手を信頼して簡単には替えない。狙い球を徹底することで、たとえ初球から手を出して凡退してもそのことは決して問わない。
「選手が動きやすいように環境を整えるのも仕事」
「やるのは選手ですから」
開幕前の高橋監督の言葉である。
「選手が動きやすいように環境を整えてあげる。それも僕の仕事だと思っています」
指揮官のこの言葉は、打線の固定だけでなく投手陣の建て直しにも生きている。
開幕前にはマイルズ・マイコラス投手の戦線離脱というアクシデントがあった。またこの10年近く投手陣を支えてきた内海哲也投手も、状態が上がらないままに二軍で開幕を迎え、今もまだ一軍復帰のメドは立っていない。
その中で1番のポイントは、開幕投手に指名されて3勝無敗(うち2完封)、防御率0.56という菅野智之投手の存在である。もはやリーグナンバー1、現状では日本球界ナンバー1の投手と言えるこの右腕が投手陣の絶対的な柱となって支えていることが高橋巨人の最大の強みであるのは言うまでもない。