プレミアリーグの時間BACK NUMBER
2年で価格倍増のルカクの移籍先は。
エバートンに見切りをつけ、古巣へ?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/04/10 10:50
史上最年少でベルギーリーグの得点王に輝き、鳴り物入りでプレミア入りしてから5年。ついにルカクは「本物」になった。
バーディーよりもチームの得点依存率は高い。
3月のFAカップ準々決勝(2-0)でチェルシーから奪った2ゴールは圧巻の一言。終盤に軽快なフットワークで4人をかわしてからゴール右下隅に決めて先制し、相手GKティボウ・クルトワの股間を抜く右足ダイレクトシュートで敵を突き放している。この2得点で「25」に伸びた今季の総得点数は、ルカクのパフォーマンスに一貫性が見られるようになっている証拠でもある。
一般的に若手には難しいとされるパフォーマンスの安定感は、ルカクにとっても課題だった。本人も「ビッグプレーヤーは開幕節から最終節までシーズンを通して仕事をする。自分もそうなりたい」と、意識して取り組んできた。
その甲斐あって、今季はプレミアでも30試合出場18得点と2試合に1点以上のペースでゴールを重ね、ハリー・ケインとジェイミー・バーディーとリーグ得点王を争っている。リーグ戦で、自身の得点がチームの得点に占める割合は35.3%。32試合出場22得点で得点王争いをリードするケインの38.6%には劣るが、34.5%のバーディーよりも依存率の高いチームの得点源だ。
エバートンの「基本がなってない」守備は改善せず。
そのチームに著しい進歩が見られれば、ルカクも移籍を考えることもなかっただろう。だが実際のエバートンは、むしろ後退気味。昨季は11位、今季も30試合を終えて12位と、CL出場を意味するトップ4からは遠ざかっている。
ポイント数を伸ばしきれない原因は、守備の甘さ。ロベルト・マルティネス監督が持つ攻撃志向の裏返しと言えばそれまでだが、識者の間で「基本がなっていない」とまで言われることも多い拙守は問題だ。リーグ戦3連敗のきっかけとなった29節ウェストハム戦(2-3)は、前半35分に退場者を出して10人だったとはいえ、ホームで後半に2点のリードがあったのだから逃げ切っているべきだった。
ちなみにルカクは、この試合でも1ゴール1アシストと仕事をしている。裏に抜けてからの左足というトレードマークのゴールで先制点をもたらし、相手DFを背負いながらもデリケートなタッチを披露して追加点をアシストした。自身の成長度にチームが追いつけていない状態なのだから、更なるステップアップを期して移籍を考えても当然だろう。