プレミアリーグの時間BACK NUMBER
2年で価格倍増のルカクの移籍先は。
エバートンに見切りをつけ、古巣へ?
posted2016/04/10 10:50
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
AFLO
加入3年目の22歳が、契約期間3年を残してビッグクラブ移籍願望を公言。
それだけ聞けば、「いい気になって忠誠心を忘れた若手がプレミアリーグにまた1人」という声が上がっても無理はない。だが、エバートンのロメル・ルカクを責める気にはなれない。
ルカクが「来季はCLでプレーできる環境がいい」と移籍を仄めかしたのは、3月後半の代表ウィーク中。父親が「移るならバイエルン・ミュンヘンかマンチェスター・ユナイテッド」と発言した直後のことだった。タイミングを前後して、代理人の口からはユベントス、パリ・サンジェルマン、レアル・マドリーの名前も移籍先候補として挙げられた。
当然、「実際は金が目当て」という世間の反応はあった。ルカクと契約を結んだ代理人が昨春に「自分ならエバートンには移籍させなかった」と発言した当初から、資金力のあるビッグクラブの興味を煽って巨額の取り分が見込める商談を狙っていると言われてきた。
当のルカクも、CL常連クラブに移籍すれば、エバートンでは週給8万ポンド(1300万円弱)の収入が10万ポンド台に跳ね上がることは間違いない。メディアでも、『デイリー・ミラー』紙などでは「出番のなかったチェルシーから脱出を求めた自分を、拾ってくれたエバートンを見捨てるのか?」として、ルカクが非難された。
右でも左でも頭でも決められるプレミア級に成長。
たしかに、2年前の時点で興味が報じられた他のクラブはユベントス、アトレティコ・マドリー、ヴォルフスブルクで、今回の顔ぶれに比べれば軽量級だった。しかし移籍先候補のグレードアップは、代理人が変わったことではなく、当人がプレミア級ストライカーに変わったことによるものだ。
5年前に母国のアンデルレヒトからチェルシーにやって来た当時のルカクは、恵まれたフィジカルとスピードに頼りがちで、スペースに走り込んで相手DFを力で抑えながら左足で流し込むゴールが唯一の得点パターンという状態だった。「ドログバ2世」の呼び声のわりには、ヘディングも得意とは言い難かった。それが今では、自ら「左足でも右足でも決められるし、ヘディングだってニアサイドでもファーサイドも打てる」と言えるだけの多彩なフィニッシュを誇る。