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欧州CLは「真の4強」が残る可能性大。
ベスト8の4戦すべてが“格差マッチ”!
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byAFLO
posted2016/03/23 10:30
15年間のキャリアで13回リーグ優勝を経験している(ユベントスでの2回は後に取り消されている)イブラヒモビッチだが、CL優勝はまだない。
エンリケ「対戦を避けたい唯一のチームはバルサ」
バルセロナ(スペイン)対アトレティコ・マドリー(スペイン)
第1戦:4月5日、第2戦:4月13日
「対戦を避けたい唯一のチームはバルサだが、我々にその可能性はない」
バルセロナのルイス・エンリケ監督は、ラウンド16でアーセナルに連勝した後にそう冗談を飛ばした。3月20日のリーガのビジャレアル戦では2点のリードを守れず引き分けに終わったが、欧州と世界のタイトルホルダーは公式戦の無敗記録を39に伸ばしており、そんな強気のコメントにも頷くほかない。
もっとも、敵将のディエゴ・シメオネは異なる考えを持っているようだ。「彼らは実に危険な相手だが、世界一のチームと対戦できるなんて最高だ。(このドローは)私をとてもリラックスさせてくれる」と不敵に歓迎。黒ずくめの出で立ちの闘将が自信を持つ根拠は、2年前のこのステージにあるはずで、その時は敵地で引き分けた後、ホームで1-0の勝利を収めて突破し、その後決勝まで駒を進めた。
ただし当時のバルサはヘラルド・マルティーノ監督の指揮下にあり、現監督が率いるようになってからは6度のアトレティコ戦に全勝している。もはや特筆すべきことではないかもしれないが、リオネル・メッシはその6試合で5ゴール、ネイマールは4得点をマーク。そこにルイス・スアレスを加えたフットボール史上最強とも呼ばれる3トップに、リーガ最少失点の堅守を誇るアトレティコがいかに抗うか。スペインの2大都市では4月2日のクラシコを皮切りに、贅沢な夜が続く。
ヴォルフスブルク(ドイツ)対レアル・マドリー(スペイン)
第1戦:4月6日、第2戦:4月12日
4つのカードで唯一、過去の対戦がない組み合わせとなった。しかし歴史を探らずとも、予想はさほど困難ではない。クラブ史上初のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント進出を果たしたヴォルフスブルクは、ヘントとの初出場同士の戦いを制してベスト8に入ったが、夢物語の終幕は近そうだ。
レアル・マドリーはジネディーヌ・ジダンを新監督に迎えてから1敗しか喫しておらず、ラウンド16でもローマを寄せ付けなかった。唯一の黒星はリーガのアトレティコ戦で、指揮官は敗戦後にリーグタイトルの獲得が難しくなったと認めたが、それはビッグイヤー(CL優勝トロフィー)に照準を定めたとも捉えられる。もし優勝が実現すれば、選手と監督として欧州を制した7人目(CL時代では2人目)の人物となり、またひとつ伝説が紡がれることになる。
ギャレス・ベイルがふくらはぎの故障から復帰し、BBC(ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド)が揃い踏みする白い巨人を、ブンデスリーガの中位をさまようヴォルフスブルクが止める姿はちょっと想像しにくい。
バス・ドスト、リカルド・ロドリゲス、ダニエル・カリギウリ、そしてエースのユリアン・ドラクスラーと複数の主力が万全ではなく、クラウス・アロフスGMも「多くの選手がレッドゾーン(危険な状態)にある」と嘆く。「この対戦に優位なチームはいない」とマドリーの渉外担当チーフを務めるエミリオ・ブトラゲーニョは話したが、その言葉を額面通りに受け止めるわけにはいかない。