セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
“あの時”のブーイングが、万雷の拍手に。
ミラノ・ダービーは本田圭佑のために。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/02/01 12:20
芝生の色がくっきりと残るユニフォームこそが、本田圭佑の献身の証なのだ。
スタンディング・オベーションにもクールな表情。
88分、ミランの10番へ交代を告げるボードが点灯した。
ベンチへ下がろうと歩みを進める本田へ、割れるような拍手とスタンディング・オベーションが降り注いだ。
“ミラノ・ダービーでスタンディング・オベーションを全身に浴びる”なんてことは、サッカー人生でそうそう手に入れられるものではない。
おそらく何物にも代えがたいほど誇らしい勲章のはずなのに、本田はあくまでクールな表情を崩さず、ブーイングを浴びていた試合と同じように、頭上で拍手をしながらベンチへ下がった。
セリエA公式戦での対戦カードとして164回目を迎えたミラノ・ダービーは、ミランの快勝で幕を閉じた。
ミハイロビッチ「本田はチームにバランスを与える」
試合後のミハイロビッチ監督は「ダービーで勝つだけでも大変なことなのに、3-0で完勝できたのだから言うことなしだな。指導者になって以来、最高の夜だ」と上機嫌そのものだった。
指揮官は「うちは前々節でフィオレンティーナに、今夜はインテルに勝った。その前にはローマにも引き分けている。前半戦に苦しんできた分、喜びは大きい。後半戦はリベンジのときだ」と、さらなる闘志をかき立てた。
そして本田の貢献ぶりについて問われると、「彼は信頼して計算できる選手なんだよ。私の指示を忠実に、正確に実行してくれる“一兵卒”だ。サイドMFとしてチームにバランスを与えてくれる」と満足気に語ったのだ。
結果が与える印象でいえば、チームトップの11得点目を挙げたエースFWバッカや1ゴール1アシストのFWニアンに及ばないかもしれないが、本田について見逃したくない数字がある。
ダービーは、1月のミランにとって7試合目のゲームだった。リーグ戦5試合に先発したミランの選手は守護神GKドンナルマやFWバッカを含めて5人いるが、コッパ・イタリアを含む7試合すべてに先発した選手はたった一人、本田しかいない。そして、1月に本田がプレーした時間は、チーム最多の619分に及んだ。
最も長くグラウンドに立ち、最もチームのために汗を流したのは本田だったのだ。