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“あの時”のブーイングが、万雷の拍手に。
ミラノ・ダービーは本田圭佑のために。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2016/02/01 12:20

“あの時”のブーイングが、万雷の拍手に。ミラノ・ダービーは本田圭佑のために。<Number Web> photograph by AFLO

芝生の色がくっきりと残るユニフォームこそが、本田圭佑の献身の証なのだ。

裏目に出たマンチーニの奇策。

 そのマンチーニは、ベンチで苦虫を噛み潰していた。

 1月のインテルは、年明けのエンポリ戦にこそ1-0で勝ったものの、その後のコッパ・イタリアを含む5試合で1勝2分2敗と調子を落としていた。

 指揮官は主将イカルディを初めとするFWたちの決定力不足が原因だと嘆き、後半ロスタイムに10人の相手に追いつかれた前節カルピ戦後には「50歳のときの私でも決められたようなゴール(の決定機)が何度もあったぞ!」とロッカールームで怒号を轟かせた。

 移籍市場での戦力補強を訴え、リーグ得点ランク2位のFWエデルをサンプドリアから獲得すると、ダービーでエースFWのイカルディを外し、2日前に合流したばかりのFWエデルをいきなり先発デビューさせ、FWヨベティッチと組ませるサプライズ起用を敢行した。DFサントンとDFフアンの両サイドバック起用も、戦前の予想にはなかったものだった。

 不甲斐ない攻撃陣と締まらない守備陣に活を入れたかったのだろうが、マンチーニの策は裏目に出た。

攻撃を支配し、献身的に守る10番に万雷の拍手が。

 35分、攻める気持ちばかりが先行するインテルは、DF長友を使わなかった左サイド、つまりミランの右サイドを支配する本田をフリーにするミスを犯した。

 本田の左足から放たれたクロスが、流れるような曲線を描く。高い打点で合わせたDFアレックスのヘディングシュートが左ポストぎりぎりに決まり、ミランが先制した。

 それでもインテルは、失点に激怒したマンチーニに命じられるまでもなくすぐに反撃に転じた。右サイドのカウンターから逆サイドへ流れたクロスをMFペリシッチが抑え、なおもミラン陣内に攻め込もうとしたとき、インテルのチャンスを潰したのは自陣に戻った本田だった。

 白いパンツを擦り切れた芝の緑に染め、泥臭い仕事を黙々とこなす10番を、サンシーロのミラニスタたちは万雷の拍手で称えた。

 昨秋のクラブ批判騒動の後、サンシーロで本田がボールを持つと、耳をつんざくブーイングが鳴った。

 あのミラニスタたちの冷たい態度が嘘のように、ダービーの夜、本田がボールを持つたびに歓声が起こった。

【次ページ】 インテル守備陣の最大の警戒を受けても――。

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