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試合中にビール、ミスも3回認める!?
低予算でセリエを戦う“エンポリ流”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2016/01/14 10:30
エンポリを引っ張る36歳のマッシモ・マッカローネ。「ビッグマック」の愛称で絶大な人気を誇る大ベテランだ。
セリエA監督で最低額、20万ユーロの年俸。
今年49歳になるジャンパオロは、そう長くない現役時代のほとんどを3部と4部で過ごした。つまり、スポットライトが瞬き、札束が飛び交う華やかな世界とは無縁のサッカー人生を送ってきた。
今季のジャンパオロの年俸額は、セリエAの同業者中最低額の20万ユーロだ。
労働観について問われた最近のインタビューでは、若かった時分の経験を語った。
「10代のうちにプロ契約してもらえるほど自分は大した選手じゃなかった。18歳で専門学校を出て、ある工場の旋盤工として働き始めたよ。それから、衣料品屋台の設営の仕事に就いた。毎朝4時に起きて稼ぎは日給1万リラぽっちさ。そこから運良くプロ選手にはなれたが、自分の原点は、少ない稼ぎでも自立することを教えてくれた工場や屋台の仕事にある、と今でも思っている」
ジャンパオロは、サッリが残した連動サッカーの土台をブラッシュアップし、戦術ベースを4-3-1-2へ移行させた。前線では司令塔サポナーラと2トップが頻繁にポジションを入れ替えながら、相手ゴールを脅かす。
中盤にはMFビュシェル(保有元=ユベントス)やMFジーリンスキ(同=ウディネーゼ)、MFパレデス(同=ローマ)ら別クラブから預けられた有望なタレントたちが居並ぶ。
地元紙に「目を瞑ってもプレーできる」と称賛されるほど練度の高い攻撃サッカーを新指揮官ジャンパオロは自分のものとした。
グレーのジャッジにも恨み言は言わない。
清貧の思想をもつ彼は、即結果を求められるセリエAで目に見える成果をこれまでに示せなかったが、今季は指導者として勝負の年だろう。
年明けの18節で、エンポリは首位インテルに挑んだ。 巨大戦力のインテルをホームに迎え撃った一戦は、前後半にそれぞれ1度ずつあったはずのPK判定をとってもらえずに0-1で惜敗。
それでも、指揮官ジャンパオロは20倍の年俸をもらう同業者マンチーニや審判へ恨み言は言わず、彼なりの矜持をしっかり示した。
「マンチーニは立場上『エンポリのPKはなかった』と言うしかないのだろう。エンポリはインテルと対等に渡り合った。選手たちは素晴らしい戦いをした」