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試合中にビール、ミスも3回認める!?
低予算でセリエを戦う“エンポリ流”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2016/01/14 10:30
エンポリを引っ張る36歳のマッシモ・マッカローネ。「ビッグマック」の愛称で絶大な人気を誇る大ベテランだ。
「よそが1度しか認めないミスをうちは3度許す」
現任会長としての連続在任期間がセリエA最長にあたる25年目に入ったコルシ会長は、恥じるでも嘆くでもなく、クラブとしてのエンポリの立ち位置を粛々と説く。
「実際のところ、エンポリの商売の規模はリーグの中位レベルにあたるサンプドリアやベローナと比べてもずっと小さい。だが、よそが選手たちに1度しか認めないプレー上のミスをうちは3度許す。エンポリに若手を預ければ、その能力が伸びることを国中のクラブが理解し始めた。残留争いのプレッシャーは付きまとうが、我々はこれからも身の丈にあった道をまっとうに進むよ」
連勝は断たれたが、地に足つけた戦いぶりこそエンポリの真骨頂だ。
10日に行われたシーズン前半戦の最終節で、エンポリは難敵トリノを相手に1-0で競り勝った。56分に股抜きゴールで決勝点を奪ったのは、やはり頼れるエースFWマッカローネだった。
7位浮上で、来季のEL出場圏を視界に捉えた。欧州カップ戦出場が実現すれば、クラブにとって'07-'08年以来の快挙だ。
マッカローネはミドルズブラでプレーしていた'05-'06年シーズンに、UEFA杯の決勝戦を戦った。セビージャに惨敗はしたけれど、コンチネンタル・トーナメントの緊張感はサッカー選手として他には得難い体験だと思う。だから、若い同僚たちにも是非味わってほしい。
「欧州の他の国からはスモールクラブがELに出てくることは珍しくない。イタリアの地方クラブにチャンスは少ないが、可能性はある。エンポリでもやれると最後まで信じるさ」
月末には、25年ぶりに冬の王者を戴冠したナポリとのアウェーゲームが控える。2-2のドローに終わった前半戦のカード同様、エンポリがナポリ相手に勝ち点を奪えれば、それだけでカンピオナートのパワーバランスは崩せる。コルシ会長の目眩はしばらく収まりそうもない。