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試合中にビール、ミスも3回認める!?
低予算でセリエを戦う“エンポリ流”。
posted2016/01/14 10:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
「うちがこんな上位にいるなんて、目眩がしそうだよ」
セリエAでも指折りの低予算クラブ、エンポリがカンピオナートを7位で折り返した。
謙虚そのものの経営方針で知られるコルシ会長を不安にするほどの快進撃。昨年末には、クラブ通算11シーズン目のセリエAで、初めての4連勝を果たした。
トスカーナの田舎町で若いイタリア人選手を育てながら、質素で慎ましいエンポリは欧州カップ戦の夢を見る。
チームの中核を担うのは、24歳の司令塔サポナーラや25歳のDFトネッリらクラブが自前で育てた若手たちだ。ただし、彼らの選手としての引き出しはまだまだ少ない。活きのいい若者たちを束ねつつ、より高みへ導くのは、来年に現役生活20年を迎えようかというベテランFWマッカローネである。
36歳の主将がアウェーで試合中にビール!?
3-2で4連勝目を挙げたボローニャでの17節アウェーゲームで、36歳の主将は周囲が仰天する行動に出た。
マッカローネは、チーム2点目となる勝ち越しゴールを決めると、ベンチ裏のスタンド席へ一目散。観客からコップを受け取ると、中身のビールをぐいっと一口、喉の奥へ美味そうに流し込んだ。
ユニフォームの右袖で口元を拭った彼はすぐさまピッチへ駆け戻った。後半途中に交代するまでには、チーム3点目の決勝ゴールも奪う千両役者ぶりだった。
試合中の飲酒行為が明確なルール違反かどうかはともかく、マッカローネの一口を咎めるような無粋な輩はイタリアにはいない。それどころか、ベテランストライカーの味ある“場外プレー”には、国中からやんやの喝采が送られた。
試合後、いぶし銀のストライカーは気取らない口調で語った。
「俺は遠征先でスタジアム近くのパブにいつも寄ることにしてる。スタンドでビールをもらったのはここ(ボローニャ)の友人たちで、彼らはもちろんボローニャのファンだよ。だが(敵対関係を超えた)友情っていいもんだろ?」