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試合中にビール、ミスも3回認める!?
低予算でセリエを戦う“エンポリ流”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2016/01/14 10:30
エンポリを引っ張る36歳のマッシモ・マッカローネ。「ビッグマック」の愛称で絶大な人気を誇る大ベテランだ。
ミランから3部クラブへ、そして地方生活。
プレミアリーグ経験もあるマッカローネは、かつてミラン育成組織が産んだ有望株の一人だった。
'90年代中盤、トップチームを率いていた名将カペッロから目をかけられ、サンシーロでのセリエAデビューを夢見た。
だが、無敵を誇った当時のミランにユース上がりがプレーできるチャンスはなく、マッカローネは19歳になる前に3部クラブへ放出された。そして、ミランはそれきり彼の存在を忘れた。
マッカローネは地方クラブを回り、人材の交流が今ほど盛んでなかった頃のイングランドに活路を求めた。ビッグクラブにはついぞ縁のなかったキャリアでも、昨年12月のカルピ戦でプロ通算200ゴールを達成し、平凡なストライカーではなかったことを証明した。
「若かった頃にミランへ残れていたら、と考えることはある。だが、もしそうなっていたら、俺は今のエンポリにある興奮を知らないままだったろうな」
エンポリFW陣は、今季から毎週木曜の夕食をいっしょに摂るようになった。無論、音頭をとるのは兄貴分のマッカローネだ。ともに2トップを組むFWプッチャレッリやFWリバヤ、FWムケリーゼら20代前半の若手と同じテーブルを囲み、忌憚ない意見を交わす。
「プレーへの疑問でもプライベートの悩みでも、互いにあけっぴろげに語り合うことがゲーム本番での結束力につながるのさ。ワイン1杯の力は大きいぜ」
監督もまた、傍流育ちの異色の存在。
マッカローネのエンポリ在籍歴は、'00年から足掛け7シーズン目になる。チームの得点王は、ゴールを決めるたびに10歳以上も歳の離れたベンチの仲間たちと歓喜を分け合うのだ。
ベテランと若手が結束しているなら、そのチームの指導者は無能のはずがない。
昨季までチームを率いた監督サッリ(現ナポリ)は元銀行員の経歴を持つ変わり種だったが、今季から後任に就いたジャンパオロもまたサッカー界の傍流を生きていた異色の指導者だ。