箱根駅伝2016BACK NUMBER
[2016箱根駅伝プレビュー]
次世代エースが狙う、王座奪還のシナリオ。
posted2015/12/24 07:00
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Rei Itaya
その勢いで今季の学生駅伝を席巻するかに見えたが、歴戦の強豪たちは「1強」の独走を許さなかった。
“山の神”を擁する王者か、大物喰いを狙うライバルか。新年の箱根路は、混沌の様相を見せてきている。
Number892号から特別転載します。
不思議なことに、あの敗戦を境にして、圧倒的なオーラが消えたようだった。
全日本大学駅伝で東洋大の後塵を拝した直後、青学大の原晋監督は駆けつけた取材陣を前に小さな声でこうつぶやいた。
「向こう(東洋大)は1秒を削り出せで、こっちは一瞬を楽しめですからね。ちょっと一瞬を楽しみ過ぎました。箱根を優勝して、出雲も勝って、ずっと右肩上がりできたけど、久しぶりに悔しい。悔しいね」
負けることなど考えてもいなかった。それは、うつむき加減に立ち尽くす、選手たちにとっても同じであっただろう。
今季、青学大の強さはそれほど際だっていた。初優勝を飾った'15年の箱根駅伝では、2位の駒大に10分以上の大差をつける圧巻の走り。新たな駅伝シーズンに入っても、「2つチームを作っても1位と2位を獲れる」と豪語した出雲駅伝で優勝。箱根経験者が8人残り、早々に宣言した大学駅伝3冠達成は既定路線のようにも思えた。
だが、「青学史上最強でなしに、学生史上最強だと思います」と自信を深めて臨んだ全日本でまさかの2位。“青学大1強”の予想はここに来て不透明さを増している。
青学最大のライバルは東洋大と駒大か。
区間が増え、距離が延びる箱根で、最大のライバルになりそうなのが東洋大と駒大の2校だろう。全日本で青学大との壮絶なデッドヒートを制した東洋大は、「その1秒を削り出せ」というチームスローガンを徹底できる強みを持つ。出雲、全日本と3位を死守した駒大も、「無冠では終われない」と闘志を燃やしてくるはずだ。
ともに箱根の勝ち方を知るだけに、知将の戦略が気になる。両校はどのようなレースプランを描いて青学大に挑むのか。
「今年は個々の意識レベルが非常に高いです。駅伝ももちろん優勝を目指しますけど、世界へという思いが陸上部全体にある。オリンピックが間近に控えてますし、そこが去年と大きく違うところですね」
東洋大の酒井俊幸監督はそう言って、チームの進歩を語った。前回の箱根は2区でエースの服部勇馬が区間賞の走りでトップを奪ったが、その後は大きな見せ場を作ることなく青学大に完敗。その悔しさがチームを変えたと話す。