サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
代表でPK失敗、レスターでは控え……。
岡崎慎司が飛躍のために歩む苦境。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/11/23 10:30
実戦で勘を養ってこそ輝く岡崎にとって今は苦しい時期だが、何度も苦境から復活してきた姿は印象に残っている。
スタメン落ちを「発奮材料」とするために。
ただカンボジア戦では、ピッチに立ってプレーをした上で悔しさを味わったのだから、まだ良かったのかもしれない。
5日前のシンガポール戦では、1分たりともピッチに立つ機会すら与えられなかった。
「たぶん、代表でベンチに入って試合に出なかったのは初めてだと思うんです」
シンガポール戦後にそう切り出した岡崎は、こう続けた。
「これまでなかったことなので、悔しい気持ちはもちろんあります。ただ、前の試合(10月13日のイラン戦)の武藤だったり、色々な選手を1トップで試すということ自体が、僕に満足していないと思うんですよね。(10月8日の)シリア戦でもPKをとったりゴールを決められたけど、前半で何か出来たかと言ったら、つぶされることが多かった。そういう意味では、『発奮材料』になるというか、自分のやるべきことは一つだなと」
プレミア移籍を選択したのは、代表のためでもある。
今の状況は自分を奮い立たせてくれる。岡崎がそう感じるのは、安っぽいポジティブ思考からではない。そして、現状を手放しで喜んでいるわけでもない。
「やっぱり、自分がプレミアに行った理由がそもそもはっきりしているので。ドイツにいたら、(マインツのエースとして)自分が認められた状態でバックアップしてもらってフォワードに入れるわけじゃないですか。でも、それでは日本代表でチームとしてラチがあかない戦いをするときに、存在感を示せないと思ったんですよね」
'14年のブラジルW杯でもそうだ。今年1月のアジアカップでもそうだ。岡崎が強烈に感じたのは、チームとしてゴールを奪う可能性が見いだせないときに、苦境を何とかできるようなストライカーにならなければという思いだった。
一言でいえば、チームに勝利をもたらせる力のあるストライカーだ。
岡崎がマインツに在籍した2シーズンで決めたゴール数は27。同じ時期に岡崎より多くのゴールを決めたのがレバンドフスキ(ドルトムント→バイエルン)、ロッベン(バイエルン)、オーバメヤン(ドルトムント)しかいないことから考えても、マインツに居続ければゴールはさらに増えたはずだ。ただ、それはエースである自分のことを見てくれる周囲のバックアップがあったからだという思いが消えなかった。