モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
全速力の予選と、燃費込みの決勝。
一発の速さに劣るロッシが勝つ理由。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/09/05 10:30
マルケス(左)の独走かと思われた今季だが、現在ポイントトップに立つのは復活したロッシ(右)。このライバル関係はしばらく続きそうだ。
3位狙いのはずが、雨で状況が一変。
「シルバーストーンは苦手なサーキットのひとつ」と言い切るだけに、ある意味、完全に3位に狙いのレースになるはずだった。
だが今季初のウェットコンディションとなり、状況は大きく変化した。
ドライコンディションで圧倒的なスピードを見せていたマルケスを従えてトップを快走する。
「全力でプッシュして何とかマルクを引き離そうと思った」というロッシだが、実際はなかなか引き離せず、作戦を変更してちょっとだけ手綱をゆるめることにした。
それまでの2分16秒というペースを18秒台まで落とし、タイヤを温存して終盤の戦いに持ち込もうという作戦だ。
そのロッシをピタリとマークするマルケスも同じ考えだったのだろう。しかし、1ラップで2秒もペースを落とされたことで、マルケスのリズムが狂ってしまった。
レースは20周。ペースを落として3周目となった13周目の1コーナーで、マルケスがリヤからスリップダウンして転倒する。
グラベルで何が起きたんだ? という仕草をするマルケス。
一方のロッシは、「マルクのエンジン音が聞こえなくなった。何かあったなと思った」と、直後にコースサイドのスーパービジョンでマルケスの転倒を確認した。
ロッシの後ろは大荒れの展開に。
これでライバルのひとりであるマルケスが脱落。そして、同ポイントで首位に立つロレンソもペースが上がらない。
ロレンソはオープニングラップに首位に立つも、ジリジリ後退。
今季ドゥカティのジュニアチームに移籍して時折速い走りを見せているペトルッチと、ドゥカティ・ワークスのドビツィオーゾ、そしてペドロサの3人とし烈な3位争いを繰り広げていた。
その中でロレンソはペドロサに先行するが、ドゥカティの2人には後塵を拝してしまう。ロッシはそれをサインボードでしっかり確認していた。
まさに、大荒れの展開。ペトルッチが初表彰台獲得の2位。ドビツィオーゾが7戦ぶりに表彰台に立つというレースだった。