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大迫勇也、“確信”の開幕戦ゴール。
内田「フンテラールみたいだもん」
posted2015/08/22 10:40
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
大迫勇也に焦りはなかった。彼は来るべきときにそなえて、爪を砥いでいたからだ。
シュツットガルトとの開幕戦の後半ロスタイム、大迫は左ひざを痛めていたが、カウンターからチャンスになると判断すると、痛みなど気にせずにゴール前に走っていった。そして、ペナルティエリア内でGKをおびき寄せたモデストからの折り返しを、大迫は落ち着いてトラップした。あとはキーパーのいない無人のゴールに、右足で蹴り込むだけでよかった。
これで3-1。ケルンにとって10年ぶりとなるブンデスリーガの開幕戦勝利を確実なものにした瞬間だった。
ブンデスリーガで2シーズン続けて多くのゴールを積み重ねてきた岡崎慎司がイングランドに去った。香川真司がドルトムントで再起を誓い、FC東京からやってきた武藤嘉紀が日本とドイツから大きな注目を集める。そして、清武弘嗣は日本人として初めて、ブンデスリーガの1部で10番を背負うことになった。
誰がシーズン初ゴールを決めるのか。そんな注目も集まるなかで、あっさりと開幕節で決めたのが、大迫だった。
開幕戦、試合開始のホイッスルはベンチで聞いた。
「(ゴールは)おまけみたいなものだからね。これからでしょう。積み重ねていきます」
1週間前に行なわれたドイツ杯のメッペン戦では4-1-4-1のインサイドハーフとして先発し、後半途中からフォーメーション変更に伴って右MFに移り、慣れないポジションでアシストを記録した。
ケルンは昨シーズンの終盤戦、アウェーでは守備的に、ホームでは攻撃的に戦うことで内容と結果がともなったサッカーが出来るようになっていた。その中で大迫も2トップの一角で不動のレギュラーの座を射止め、残留に貢献した。
それゆえに今シーズンの開幕前、ヨイッチやビッテンコートら多くの選手補強をしたとはいえ、ケルンが戦い方を変えることに驚きの声が上がっていた。そして多くのメディアが昨シーズン終盤戦と同様に大迫をスタメンに予想していたにもかかわらず、シュツットガルト戦ではベンチで試合開始のホイッスルを聞いた。