JリーグPRESSBACK NUMBER
遠藤航がA代表ボランチに殴りこみ!
「スペシャルよりもオールマイティ」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/07/15 11:00
各世代の代表で中心的な役割を果たし、クラブでも守備の軸として活躍する遠藤航。すでに2子の父親でもあり、精神的な安定感は22歳という年齢を全く感じさせない。
「スペシャルよりもオールマイティが合っている」
ボランチについて、研究も怠らない。常にA代表の試合を見て、中盤に入ってプレーするイメージトレーニングをしているし、プレミアなど海外のサッカーを見る時も視線が行くのはボランチだ。その上で、遠藤はプレイヤーとしての自分の在り方をしっかりと理解している。
「僕は、ひとつの個性を伸ばすというよりは、全部を平均的にクオリティーを高めて、あいつはこんなことも、あんなこともできるという選手になりたい。スペシャルよりもオールマイティが自分に合っているんです」
では、遠藤は激戦区の中盤で、東アジアカップメンバー23名枠に生き残ることができるのだろうか。ボランチ候補はザッと名前を見るだけでも柴崎岳、今野泰幸、大谷秀和、藤田直之、青山敏弘、山口蛍、谷口彰悟、米本拓司、喜田拓也らがおり、競争は非常に厳しい。メンバー発表までアピールし続けなければ、生き残りはままならない。
「中盤は厳しいですよね。しかも、僕は今チームではDFなんです。本当は少しでも経験値を積みたいんでボランチとしてプレーしたいですけどね。ただチームの事情もあるので、まずはそのポジションで貢献していく。1対1の強さやポジショニング、球際の強さはどの場所でも大切だし、攻撃では縦パスを出し、顔を出して間で受けたりしてフィニッシュに絡んでいく。自分の良さを積極的に出していくだけです」
きれいにサッカーするのは、日本のよくないところ?
ボランチは当然、攻守両面に貢献することが求められる。遠藤が他選手との違いを見せられるとすれば、「メンタルの強さ」だろうか。高温多湿のマレーシアで行なわれたリオ五輪1次予選では中1日のハードスケジュールの中、選手で唯一全3試合スタメン出場を果たした。国際試合でも緊張せず、湘南では21歳ながら副キャプテンを任せられるなど、年上の選手にも物怖じしない。どんな状況でもシンプルにプレーし、ムダなことをしない。ロシアW杯2次予選シンガポール戦にもし遠藤がいたら、日本に蔓延する「崩しの美学」を打ち壊し、よりシンプルにストレートにゴールに直結するプレーを見せてくれたような気がするのだ。
「日本ってボールを動かしてきれいにサッカーするイメージがあるじゃないですか。それって、代表に限らず日本の良くないところのひとつだと思うんです。僕も前はきれいに崩してなんぼって思っていました。でも、今は泥臭く戦うというか、気持ちが一番重要だと思っています。それはU-19でアジアで負けて得たものでもあるんです。戦う気持ちはみんな持っていると思うけど、負けたくないとか、その気持ちをプレーに出して泥臭く戦い、勝利に貢献する。自分はそれができるし、そういうプレーでこれからも代表の中でやっていきたい」
今の日本代表には、よりゴールに向かって泥臭くプレーする選手が必要だ。遠藤はまさにそのタイプ。既存の選手でいえば今野や青山の系統であるが、遠藤もまた、若いが渋く輝く存在になれるはずだ。