Jをめぐる冒険BACK NUMBER
“スタンダード”が揺らぐ川崎の苦悩。
何故パスはつながらなくなったのか。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/06/15 10:30
川崎は不動の中心がかつては中盤にあったが、その求心力は揺らぎつつある。果たしてJ屈指の個性あるサッカーはどうなるのだろうか。
あの華麗な崩しが見られなくなるのは残念でならない。
'13年から'14年夏までの川崎は、ピッチ上で選手が違うユニホームを着ていたとしても、「これは川崎だ」とすぐに分かるぐらい、ほかの17チームとの“違い”が際立っていた。プレーの選択に迷いはなく、「何を武器にし、どう勝つか」が明確に整理されていた。
ところが今は、等々力のピッチで川崎のユニホームを着てプレーしていても、「本当に川崎なのか」と目を疑いたくなることがある。普通のチームが普通に攻め、普通に守っているように見えることもある。
この先、大久保、杉本、船山貴之の3トップをより生かすサッカーをしていくのか。
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あるいは、湘南戦で意地とプライドを爆発させてPKを獲得した中村がスタメンに復帰し、小林と大島が戻ってくれば、何事もなかったかのように(実際、川崎には毎年こういうことが起きる)、これまでの通りのサッカーが見られるようになるものなのか。
風間監督がどのように先を見据え、チームがどう変わっていくのかは分からない。
ただ3年間、このサッカーでタイトルが獲れたら本当に革命だな、という気持ちで見守ってきた者のひとりとしては、もしあの緻密で、繊細で、大胆で、華麗な崩しが、もう二度と見られなくなるのだとしたら、残念でならない。