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鳥栖、ただいま空中戦依存を治療中。
川崎を地上で制圧も、結果は伴わず。
posted2015/05/25 11:45
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
できる限りポゼッションを。
ロングボールを蹴りこんでいこう。
J1第13節・川崎フロンターレvs.サガン鳥栖戦(等々力)の試合前、それぞれのチームに監督が与えたゲームプランだ。
この2つの指示を見て、Jリーグに少しでも興味をある人なら「前者は川崎で、後者は鳥栖だろうね」……と思うだろう。
しかし、だ。
キックオフ直後、川崎がシンプルにロングボールを入れたかと思えば、鳥栖は中盤から最終ラインにかけてボールをつなごうと試みる。
着用しているユニホームが逆なんじゃないか? と思いたくなるような展開でスタートしたのだ。
豊田の空中戦が最大の武器なのは変わらないが。
'12年にJ1初昇格して以降の3シーズンを5位、12位、5位としぶとく生き残ってきた鳥栖。彼らのストロングポイントと言えば、労を惜しまぬハードワーク、そして肉弾戦だ。
シンプルなクロスやロングボールに、セットプレー。
キャプテンの藤田直之が放り込む、弾丸ライナーのようなロングスロー。
それに対して豊田陽平をはじめとした長身選手が臆することなく飛び込む。もしタイミングが合わなかったとしても、セカンドボールへ我先にと詰める泥臭い形が頭に浮かぶのではないだろうか。
今シーズンも第12節終了時点での得点数16のうち、前述した形で奪ったゴールは10。空中戦が鳥栖の生命線であることは確かだが、今季はコンビネーションを発揮した攻撃を仕掛けている。
例えば1-0で勝利した第2節・ガンバ大阪戦での決勝点だ。左サイドをドリブルで駆け上がった金民友がシンプルなクロスを上げるかと思いきや、斜めに走り込んだ池田圭にグラウンダーのパス。それを受けた池田がゴールライン付近をえぐってマイナスのパスを送り、タイミングよく中央に走り込んだ白星東がダイレクトで合わせた。
J屈指のエアバトラー・豊田を使わずとも、チャンスにしてみせる。その志を感じる一撃だった。