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鳥栖、ただいま空中戦依存を治療中。
川崎を地上で制圧も、結果は伴わず。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/05/25 11:45
今季も既に6年連続となる二桁得点を決め、宇佐美貴史と並んで得点ランキングトップを走る豊田陽平。今後クラブが繋ぐサッカーを志向する中で、どんな役割を果たすのだろうか。
風間監督「前から来る相手に対して、背後への攻撃を」
ゲームプランについては、風間八宏監督もこう認めている。
「立ち上がりから『相手をしっかり見て戦おう』と言いました。『前から(積極的なプレスに)くる相手に対して、背後への攻撃を仕掛けるということで長いボールを蹴っていこう』と」
鳥栖が激しく寄せてくるのなら、裏を狙う。大島僚太と小林悠を負傷で欠いていることもあってか、フィジカルに優れる大久保嘉人と杉本健勇の2トップに預けるという、いつもとは違う形を模索した。
ただ、川崎の指揮官はこう続けた。
「結果的にそれによって判断が非常に遅くなり、自分たちのリズムがなかなか作れなくなりました」
前線へのロングボールが収まりきらず、かといってビルドアップをしようとすると鳥栖の強烈なプレッシングに苦しめられる。どちらが狙い通りに試合を進めていたかと問われれば、間違いなくアウェーチームに軍配が上がっただろう。
中村憲剛「だから、サッカーって難しいよね」
それでも、最終的に3-2で勝利を収めたのは辛抱強く球際で闘いきった川崎だった。
それも後半、大久保と杉本が挙げたゴールはどちらもクロスから生まれたもの。地上戦で成長を見せたはずの鳥栖が、最後に空中戦で屈するとは皮肉な結末である。
「本当に残念というか悔しいです。勝ち切りたかったというのが……。内容としたら今季で一番くらいだったと思うので」
内容と結果の齟齬。森下監督が吐露したのは、別の引き出しを作ろうとするチームゆえの悩みだった。
「だから、サッカーって難しいよね」
中村憲剛がミックスゾーンから去る際につぶやいた一言が、この90分間を物語っていた。