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金沢がJ2で3位の理由を徹底解説。
無名と侮るなかれ、これは本物だ!
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/05/21 10:30
清原翔平(中央)は2012、2013年のJFLベストイレブンにも選出されたチームのエース。憧れの選手はサビオラという165cmの小兵が、金沢を牽引している。
「今後チームが残留に、上に……残留に向けて」
説明のとおり、60分に井出遥也のゴールでリードした千葉は、それからパタリと縦への推進力を失い、自陣ゴールに向けてズルズルと後ずさりした。すると今度は千葉陣内にスペースが生まれ、「ボールを持てる選手」を投入した金沢の「間をうまく取る」攻撃がビシビシと効果を発揮する。個の力で上回る相手に何度跳ね返されてもジワジワと押し込んで、最後の最後に同点ゴールを奪った。
「得点した辻正男選手は、ずっとケガで出場機会がなくて、それでもずっと努力してきた。彼が大きな仕事をしてくれたことは、今後チームが残留に、上に……残留に向けてやっていく中で、非常に大きかったのではないかと思います」
「上に」と言いかけて「残留に」と言い直すところに、この小さなクラブを率いる指揮官の人柄と、その胸に秘めた野心、さらにはそれを自重しようとする謙虚さが見て取れた。
この勢いを継続するために必要なのは、「お前らは強い!」と煽るアメか、それとも「いつまでも続くと思うな!」と叱咤するムチか、そのはざまで揺れる心情も伝わってくる。
「『出来すぎ』と言ったら選手たちに怒られますけど」
記者から質問が飛ぶ。「日程の1/3が終わりましたが」という問いかけに対し、机の上に置いたレコーダーは、思わず漏れた「ああ、そっか」というつぶやきを拾った。
「いやもう、『出来すぎ』と言ったら選手たちに怒られますけど、多くの勝ち点を積み上げられているので、何も言うことがないというか。ただ、この勢いを自分たちから失くさないように、ずっと続けてやっていきたいと思います」
――失点が一番少ないことについては?
「うーん……そうですねえ……。あの、形で守っているわけではなくて、チームで11人の約束事の中で、センターバックとボランチを中心に、一人ずつ、一人ひとりが状況に合わせて、自分たちの距離感、非常にポジショニング、ボール奪取を含めてよくやってくれていると思います。あの、本当に選手一人ひとりの力だと思います」