Jをめぐる冒険BACK NUMBER
佐藤寿人が中村憲剛を徹底マーク!?
広島は“らしさ”よりも勝利を選ぶ。
posted2015/05/10 10:50
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
ゴールデンウイーク最終日に行なわれた川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島。
川崎のコントロールタワー、中村憲剛がボールを持つたびに執拗に追いかけ、簡単にパスを出させまいとした広島の選手がいた。
それが、青山敏弘や森崎和幸といった中盤の選手や、2シャドーの柴崎晃誠であれば驚くこともない。だがその選手は、広島の誇るエースストライカー、佐藤寿人だった――。
「もう、マンツーマンですよ。今日はまるでボランチのようでしたね」
この日、シュートゼロに終わった広島の背番号11は、そう言って苦笑した。
「そりゃ、キツイですよ。シュートも打ってないし」
「(監督の指示ではなく)自分の考えですね。川崎対柏の映像を見たら、大谷選手が憲ちゃんをタイトにマークして、川崎の攻撃力を半減させていた。だったら1-0でリードしていたし、自分がハードワークして抑えに行こうと」
佐藤はこれまでJ1で147ゴールをマークし、通算得点ランキングの3位に立っている。同じピッチには、7点差にまで迫ってきている大久保嘉人がいた。その目の前でゴールを奪い、差を広げたい思いもあっただろう。
また彼は、2004年から11年連続二桁ゴールという大記録を継続中でもある。今季はまだ2ゴールしか奪えていない。ゴールへの飢えは、半端なものではなかったはずだ。
しかし、彼はフォア・ザ・チームに徹した。
「そりゃ、キツいですよ。シュートも打ってないですし。個人の記録を考えたらフラストレーションは溜まりますけど、そんなことは言っていられない。チームが勝つために何が必要か。それがハードワークなら、ハードワークするだけ。もちろん、0-0なら狙いに行きましたけど、今日は勝っていましたから」
チームのために奔走したストライカーは、早くも54分に20歳の浅野拓磨と交代し、それから36分間、ベンチから戦況を見守った。
4月18日から始まった、週2ペースで試合が続く公式戦7連戦。6試合を終えた時点で、この過密スケジュールを全勝で駆け抜けている唯一のチームが、広島だ。
J1では7勝1分け2敗の成績で3位に浮上し、首位・浦和レッズとの勝ち点差を1まで縮めた。ナビスコカップのAグループでも、1勝2分けで2位の好位置につけている。