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佐藤寿人が中村憲剛を徹底マーク!?
広島は“らしさ”よりも勝利を選ぶ。 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2015/05/10 10:50

佐藤寿人が中村憲剛を徹底マーク!?広島は“らしさ”よりも勝利を選ぶ。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

J1通算得点ランキング1位の中山雅史は157点。佐藤寿人にとっては、飼い犬に「ゴン」と名前をつけるほどの憧れのストライカーだが、記録の上では既に視界に捉えているといえる。

主力選手流出の影響は決して小さくない。

 広島は'12年、'13年にJ1優勝を果たしながら、毎年のように主力選手が引き抜かれてきた。

 今季も、2シャドーの石原直樹と高萩洋次郎がチームを去ったが、新加入のFWドウグラスとベテランの森崎浩司が、そして森崎浩司が負傷離脱したあとは、本来はボランチの柴崎晃誠がコンバートされてその穴を埋めている。

 さらにベンチには、売り出し中のU-22日本代表コンビ、スピードスターの浅野拓磨とレフティモンスターの野津田岳人が控え、5月2日のベガルタ仙台戦では、このふたりが1ゴールずつ奪って、チームを5連勝に導いた。

 川崎戦に限らず、佐藤がこれまで好機に恵まれていないところを見ると、2シャドー移籍の影響は決して小さくないのだろう。だが補強や育成でうまくやり繰りし、選手層や戦い方の幅を着々と増やしているように見える。

 この川崎戦では開始3分に相手DF陣の連係ミスを突いて先制すると、ディフェンスラインから攻撃を組み立てる従来のスタイルは脇に置き、自陣ペナルティエリア前に二段構えの防御ラインを敷く守備重視の戦い方で、勝ち点3を手繰り寄せてしまった。

いつでも、自分たちの土俵で戦えるわけではない。

 川崎が一方的に攻めていたように見えるこのゲーム。しかし、前線でゴールを狙い続けた男の感想は、違うものだった。大久保が、悔しさを滲ませる。

「押し込んでいた? いや、持たされていたでしょう。広島のやり方はうまかった。ああいう守備は、遠目からシュートを打ったり、大胆さを出していかないと崩せない」

 90分間耐え切った広島の戦いぶりから感じられるのは、自信の拠りどころを持つ者の強みだ。

 ゲームの主導権は、ほぼ一方的に相手に握られている。

 それでも自分たちはやられない、と思えるかどうか――。

「長いシーズンにおいては、こういった試合は必ずある。それでも厳しい戦いを1戦1戦モノにしていった結果、最後に優勝できたのが2013年でした。見栄えは悪いかもしれないですけど、今の僕たちにはこうした勝利も必要かなって思います」

 3バックの一角を務める水本裕貴の言葉だ。

 いつでも、自分たちの土俵で戦えるわけではない。それでも、勝つ。それが優勝につながる。

 心の底からそう信じられる成功体験が、広島の選手たちにはある。それが勝者のメンタリティなのかもしれない。

【次ページ】 “ノックアウト”スタイルでリーグを戦う。

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