マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
先制点を取られて「いい顔」になる。
巨人・田口麗斗が即戦力なのは当然!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/04/18 10:40
田口麗斗は、9月に20歳を迎える19歳。堂々たるマウンドでの表情や立ち姿からは、彼がいかに強靭なメンタルを持っているかがひしひしと伝わってくる。
145kmに見える135kmを投げた高校時代。
バッティングも達者だったが、ピッチングはもっと達者なヤツだった。
小さいのに140kmを投げる。それで名が売れ始めたのは、高校3年の春だったろうか。
2013年は、高校生の投手に人材がほんとに少ない年だった。とりわけ左腕では、桐光学園・松井裕樹(現・楽天)が頭2つ、3つ飛び抜けた存在で、そのあとは誰もいない。そんな言われ方をしていた頃だったから、170cmそこそこのサイズでも140kmがありがたがられて、「田口麗斗」の前評判は夏にかけてぐんぐん上がっていた。
やけるような真夏の炎熱の中で、広島新庄高・田口麗斗の全力投球が続く。
おそらく2足分ほど一塁側にインステップしながら、右足を踏み込んでから強烈に体の左右を切り返して、144~5kmにも見えるクロスファイアを右打者の内角にガンガン続けていく。
実際、スピードガンを構えるスカウトたちに確かめると135~6kmでしかないが、ものすごく速く見えるのは、プロの面々も等しく認めていた。しかしそれ以上に田口麗斗のピッチングが光って見えたのは、変化球でもストレートと同じか、むしろそれ以上に腕が振れ、縦横2種類のスライダーに大きなカーブ、チェンジアップと、すべての変化球でストライクがとれることであった。
「田口麗斗は即戦力」と言って笑われた2013ドラフト。
実戦力。
広島新庄・田口麗斗を評する言葉として、私がこの時から使い始めた表現だ。
キャッチボールを見ると「ええっ!」と思うほどぎこちないのに、マウンドに上がって打者に向かって投げ始めると、躍動感あふれる投球フォームに豹変する。
そして、持ち球すべてを使って追い込むと、渾身のクロスファイアで体の近くをえぐり、打ち取るというよりはつぶしにいくピッチング。“殺気”すら感じるファイティング・スピリットを発散させていた。
「田口麗斗は即戦力、すぐ使える」
2013ドラフトの前後、彼のことを問われて、ずいぶんそういう発言を繰り返して、ずいぶんと疑われ、笑われたものだ。
高校生じゃないか。小さいじゃないか。松井裕樹に比べれば、だいぶ落ちる。反論はキリがなかった。