マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
先制点を取られて「いい顔」になる。
巨人・田口麗斗が即戦力なのは当然!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/04/18 10:40
田口麗斗は、9月に20歳を迎える19歳。堂々たるマウンドでの表情や立ち姿からは、彼がいかに強靭なメンタルを持っているかがひしひしと伝わってくる。
先制点を取られて「いい顔」になる男。
2年目の春にプロ初登板。それも、東京ドーム42000の大観衆の前である。
なのに、いつも投げているような顔で投げている。それがすごい。
2回、1死一塁からヤクルト・田中浩康に真ん中外めのストレートを右中間に弾き返されて先制点を許す。
そのあとの顔が実によかった。
さあ、ここからが仕事だ。
横顔にそう書いてあった。
右打者の足元に突き刺さってくるようなスライダーで、荒木貴裕、中村悠平を立て続けに三振にきってとって、ピンチを切り抜けた。いい顔になった。
もう、ただの“じゃがいも”じゃない。
なにか背負って投げているヤツ。高校生の頃のピッチングから漂ってきたのは、そんなせつないような空気だった。
生活を懸けて捨て身で投げ込んでくる必死感。そんなムードを感じたものだ。
私の勝手な思い込みだったのかもしれないが、なにか必死にならねばならない理由を背負って投げている。私には、そう思えてならなかった。
ハイタッチに、グラブをとって右手で応じる姿。
思い出したことが一つ。
炎熱のマウンドで呉商業を8回まで0点に抑え、ダグアウトに戻ってきた田口麗斗。快勝に沸くチームメイトから求められるハイタッチに、彼はグラブをはずして右手で応じていた。
意外と用心深いヤツ。こういうところに“人間”が出る。
真っ赤に燃えて夢中に投げ込んでくるだけのように見せておいて、実は、奥の奥はクールに醒めているヤツなのでは。
「はい、まだ3つありますから」
試合の後の囲み取材。祝福の言葉を投げた報道陣に、田口麗斗の最初のひと言はこうだった。