マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
先制点を取られて「いい顔」になる。
巨人・田口麗斗が即戦力なのは当然!
posted2015/04/18 10:40
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
2死からポン、ポン、ポンとシングルが3本続き、巨人が0-1を同点にして、試合の流れが完全に変わっていた。
対ヤクルト戦、打席に入った田口麗斗投手の姿を見て、一昨年の7月、彼の“最後の夏”の姿を思い出していた。
こいつ、バッティングいいんだぞ……。思わず、つぶやいていた。
2013年7月23日。
夏の甲子園・広島県予選、4回戦。
左腕・田口麗斗の奮投で勝ち進んだ広島新庄高は、呉商業高と対戦。朝の9時から30℃を超えた、カンカン照りの呉の球場だった。
打順は9番でも、スイングが違っていた。
おそらくピッチングの負担にならないように、ベテラン・迫田守昭監督が彼の肩の荷を軽くしてくれていたのだろう。
10時には35℃にもなっていた炎天だったのに、すずしい顔で三遊間をライナーで抜いたあとの第2打席。
がっしり踏み込んだ右足を“柱”にした、松中信彦のようなスイング。白球がホームランの角度で真一文字にライトポール上空めがけて飛んでいったから驚いた。
かすかに切れて、なんとも惜しいファールになった後の内角速球。今度はサッと割りばしを振り抜くようなスイングで、速い打球がライト線を抜いていった。
力半分、余裕のひと振りだった。
石川雅規に本気で腕を振らせた田口のスイング。
打球がファールになる。あいかわらず、いいスイングだ。
それも、プロで10年以上メシを食っている石川雅規を相手に回してのことである。ひるむどころか、対等の勝負に持ち込んでいる。石川雅規が本気で腕を振っている。
コイツ、打つんじゃないか……。
ボテボテのゴロが三塁前に転がって、一塁ゆうゆうセーフの内野安打になったのも、田口麗斗のスイングの鋭さに、三塁手・川端慎吾が立ち位置を前にとれなかったせいだった。