プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「有望な選手」は、まだ力不足の意。
武藤嘉紀に伝えたい“急がば回れ”。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/04/20 10:30
昨年9月、アギーレ監督に初招集されて以来、コンスタントに代表に呼ばれている武藤。ハリルジャパンで、まずは代表出場率75%を目指して欲しい。
レンタル先での立ち位置も不安定なものに。
となれば、チェルシー入り後の第1歩は欧州大陸のレンタル移籍先で踏み出すという線が濃厚だ。オランダのフィテッセとは提携関係の解消が指摘されているが、代わりに、フランスのリールやベルギーのムスクロンペルウェルツと提携の見込みと報じられてもいる。
CL出場歴もあるリールであれば修行先として不足はない反面、定位置は保証されず、その間にチェルシーで新たな競争相手が台頭するリスクも覚悟しなければならない。
モウリーニョが触れたFFP規則の他、代表再建に取組むイングランドでは自国で育った選手を優遇する“ホームグロウン”枠の拡大も検討されている。17年前にクラブの若手最優秀選手賞に輝いたジョン・テリーが、34歳の今も唯一の生え抜きレギュラーであるチェルシーにとって、ユースからの1軍戦力輩出は最重要課題の1つだ。
例えば、武藤と同じく前線の中央とサイドをこなす若手には、先のQPR戦でもベンチ入りしたイザイア・ブラウンがいる。来季には、昨夏のプレシーズンでアピールに成功していたジェレミー・ボガが、1軍の2列目で個人技を披露する機会を与えられても不思議はない。共に18歳の両者は、モウリーニョが「2、3年後に代表レベルに成長していなければ私の責任だ」として、起用の意向を明言している「自家製」の有望株だ。
不本意なレンタル移籍の繰り返しだけは避けるべき。
もちろん、メンタルの強化を含めて、機会を逃さずに海外に飛び出すメリットはある。22歳だが、プロとしてのキャリアが浅いことから「既に」22歳とも言える武藤には、チェルシーからのオファーをビッグクラブ入りのラストチャンスと見る向きもあるに違いない。
しかし、「潜在能力」枠としてのチェルシー入りが不本意なレンタル移籍の繰り返しに終われば、トップクラスへの道さえ閉ざされてしまいかねない。欧州大陸でチェルシー入りへのステップを踏むのであれば、修行先は武藤を預けられたクラブではなく、武藤を欲しがっているクラブであるべきだ。チェルシーが目を付けた選手として、夏までには移籍先の選択肢も増えることだろう。